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【事例で見る】効果的な実証事業に欠かせない3要素(森林×異分野アクセラプログラム編)|社会課題解決と社会実装④

一般社団法人社会実装推進センター(略称:JISSUI)は、「社会課題を解決し得る、新しい技術やアイデアの“社会実装”を推進する」ことを掲げて活動している実証事業支援のプロ集団です。

政府の実証事業を通じて、数多くの大企業、スタートアップ、学術機関など…イノベーションの担い手を支援しているJISSUIが、複雑化し、不確実性の加速する時代に「なぜ、“社会実装”が重要なのか?」をIX Academy 2023(主催:一般財団法人日本経済研究所)にて語りました。

【基礎知識】実証事業と社会実装とは?
1記事目:実証事業のゴールは「投資可能な状態」にすること
2記事目:なぜ、社会実装にスタートアップが欠かせないのか?

【ケーススタディ】効果的な実証事業に欠かせない3要素
3記事目:ものづくりエコシステム編
4記事目:森林×異分野アクセラプログラム編
5記事目:EIRを活用した新規事業創出編


【具体例】林業分野への新技術導入・実証事業

次に『林業分野への新技術導入・実証事業』のプロジェクト事例を交えて、説明していきましょう。

林業には、多くの課題があります。例えば、戦後に植えた人工林が育ち、いよいよ伐っていくタイミングになっているのですが、就労人口が非常に少ない。労災率も業務中の死亡率も高い。

イノベーションが必要ではあるけれど、林業の市場規模2000億円だけでは、メーカーや大企業は参加しづらく、森林組合や中小企業を中心にわずかなプレイヤーで公共事業のように実施していく世界になっています。

そのため、いまいるプレイヤーだけでは、積極的にR&Dをしていくような投資はあまり出来ません。他産業との交流も乏しく、そうした閉鎖的な業界なのでイノベーションが起こりにくく、既定路線では課題解決の道筋が見えない中で行き詰まっている状況でした。

そこで「異分野とオープンイノベーションを促進して化学反応を起こせないか?」と林野庁から相談が来たのが始まりでした。

森林×異分野によるアクセラレーションプログラム『SFA』

この取組では、最初にSFA(Sustainable Forest Action)と題して、林業事業者と異分野事業者をマッチングし、事業化を支援するスポンサー陣が後押しを行なって、課題解決のアイデアを実現するアクセラレーションプログラムを開催しました。

SFAは、メンバー選定し、異分野事業者には林業体験をしてもらいながら、メンターを設置して事業計画をブラッシュアップしつつ、Demodayを行って優秀チームはさらに事業化を支援していく…といった一般的なアクセラレーションプログラムになっています。

このSFAを行って出てきたビジネスアイディアを実用化を支援することを目的のひとつとして、翌年度に実証補助事業が立ち上がりました。その過程で林業に関わりを持った異分野企業が「何が大変なのか?」「何に気をつけるべきか?」をフォローアップ調査するという建て付けで『林業分野への新技術導入・実証事業(異分野技術導入・実証)』を進めていきました。

『目的の再設定』と『ポートフォリオ設計』で、無意識の“手段の目的化”を防ぐ

このプロジェクトでは『目的の再設定』と『ポートフォリオ設計』を並行して行なっており、そこが非常に重要かつ面白いポイントとなっています。

まず、SFAの初期段階では、プログラムの募集課題をワークショップで洗い出して、整理した課題マップを作成しました。

課題マップで課題を洗い出し、整理していくことで、プロジェクトが始まる前では、課題マップの末端にある「植林コストが(云々カンヌン)」という話ばかりだった議論が、抽象と具体を行き来して議論を交わし、目的と手段の全体像がわかってくることで、本質的な議論に進んでいくことができました。

この工程を経ずに末端の具体的な手段の話だけをしていくと無意識に“手段の目的化”に陥ってしまいがちで、実際に本プロジェクトでも最初は末端の議論だけで「その他の手段もあること」を見落としそうになっていました。

ですが、最初に『ポートフォリオ設計』を通して、全体像とスコープを合意して、お互いの目線をすり合わせて『目的の再設定』もできていたため、末端の議論だけでは除外されてしまうところだった多様で幅広な、しかし目的に沿った案件の採択に繋がりました。

また、一度全体を網羅することで林業における新規事業開発をパターン化して、ガイドラインに落とし込むことができました。

『共通知化』が、社会実装ノウハウを更に深める

このようにパターン化することで翌年度は類型ごとに募集を掛けることが可能になり、応募事業者も「あ、私のことだ」と自分ごととして感じて応募に繋がりやすくなります。そして、各パターンに事例が集まり、さらに課題の網羅性も高めていくことが可能です。

そうした深まった社会実装の知見を『共通知化』して、広げることで参入するプレイヤーを増やし、その人たちの成功確率を上げるためのノウハウを提供することに繋げ、新しい取組によって共通知も更に深まっていくというサイクルとなっている事例になります。

※ガイドラインは、当団体の運営するメディアで無料公開していますので、ぜひご一読ください。

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