リコーの事業共創プログラムTRIBUSの出向起業事例から学ぶ、新しい事業創造のカタチ
TRIBUS(トライバス)とは、株式会社リコーが運営している統合型のアクセラレータープログラム。社内外の挑戦者の想いを実装し、事業と人々を育む事業創造のための挑戦の場として2019年から展開されています。
以前、FLAGでも、TRIBUSの採択プロジェクトである『ホログラフィックディスプレイの開発とリアルのイベントサービス』を手掛けるチームが、『出向起業制度』を用いて株式会社ブライトヴォックス(以下、brightvox)として、株式会社リコーに所属しながら起業という挑戦を行った事例を紹介しました。
今回、株式会社リコーでTRIBUS運営事務局メンバーを務める森久さんと生澤さんにお話を伺いました。
創業の精神を礎に生まれたリコーの事業共創プログラムTRIBUS
一般社団法人社会実装推進センター 猪股(以下、JISSUI 猪股) まずはお二人の自己紹介をお願いします。
株式会社リコー 森久氏(以下、リコー 森久) TRIBUS(トライバス)で運営事務局をしている森久と申します。私自身、TRIBUSに社内起業家チームとして応募したのですが、その時はピッチ選考で非採択になってしまって…。
その後「TRIBUSの事務局にどうですか?」と声掛けがありました。TRIBUSのような仕組みをもっと社内に根づかせたいという想いもあって、2020年からTRIBUSの運営事務局として参画しました。
元々、製品の設計や開発、プロジェクトマネジメントなどもやっていたので、各チームのそういった領域の相談に乗りながら運営に携わっています。
株式会社リコー 生澤氏(以下、リコー 生澤) 同じく、TRIBUSで運営事務局をしている生澤と申します。私は入社以来、弊社の主力事業にあたる複合機プリンターの領域で商品企画や事業戦略に携わっていました。
そこに長く所属していたのですが、今後のキャリアを考えた際に「別の分野での経験も積みたい」という想いがあり、2年前にまずは社内副業という形式で、スタートアップと一緒に伴走して協業検討を橋渡しする、TRIBUSで ”カタリスト(※)” と呼ばれる役割を担当しました。
JISSUI 猪股 TRIBUSは、新規事業プログラムであることやスタートアップが絡んでいる点が特徴的ですよね。プログラムの詳細をお伺いできますか。
リコー 生澤 我々はTRIBUSを「事業と人々を育む事業創造のための挑戦の場」と定義し、社内外にいる挑戦者の方々が持つ想いを社会に実装するためのアクセラレーションプログラムとして運営しています。
弊社の歴史をさかのぼると、リコー創業者である市村清の経営哲学の1つ「儲ける経営より儲かる経営」という言葉があります。市村清は、理化学研究所から生まれたベンチャー企業としてリコーを創業し、その後も世の中にイノベーションをもたらす製品やサービスを数多く生み出しました。
我々TRIBUSとしてもその創業の精神に立ち返り、チャレンジする人の支援・育成、新規事業の創出を促進する文化のさらなる醸成を目指していきたいと考えています。
リコー 生澤 TRIBUS設立の背景は多々あります。
VUCAの時代に即した価値あるものを世の中に届けるには今までのやり方だけでは難しいといった課題や、スタートアップとの事業連携による自社保有技術のサービス化を模索していたことも、背景の一つです。
ほかにも、社員から挙がっていた「過去の事例や既存のルールに縛られてしまい、新しいことに挑戦できる場が少ない」という声も背景に、TRIBUSが生まれました。
また、TRIBUSが大切にしてるポリシーは3つあります。
「①リコーグループの中だけで判断することはやめる」、「②リコーグループだけで取り組まず社外にある当たり前やご意見を大事にしながら進めていく」、「③”いいね”と言っただけで終わりにせず実行に移していく」の3つです。
リコー 生澤 TRIBUSの大きな特徴に、社内の挑戦者が手を挙げて新規事業というかたちでやりたいことを提案する『イントレプレナーアクセラレータープログラム(IAP)』と、社外のスタートアップの方々と連携してイノベーションをどう起こしていくかを模索していく『コーポレートアクセラレータプログラム(CAP)』という2本の柱を同時並行させていることが挙げられます。
社内起業のプロセスでは、まず前提として、リコーグループの従業員であれば誰でも手を挙げて応募が可能です。一次審査を通ったプロジェクトは、その後数回のピッチコンテストを挟み、それらを通過した方にアクセラレータープログラムに進んでもらいます。
社外のスタートアップの方も、流れは同様です。我々の想いに共感してくださった企業の方に応募して頂き、一次審査後はピッチコンテストに進んでいただきます。
ピッチコンテスト通過後のアクセラレータープログラムで社内外のプロセスが統合されるので、それ以降は選択肢として社内外が連携できる機会も設けながら成果発表を目指します。
もちろん社内だけで各提案の善し悪しを決めることはせず、社外の審査員の方にも入って頂き、「社会的に見てこの提案は面白いか」「スケールするか」といった議論を進めていく流れですね。
リコー 生澤 社内に関して言えば、応募まではそれぞれの本業があることが前提です。しかし一次審査に通った後は、社内の副業制度などを活用することで、20%の工数をかけて新規事業のブラッシュアップに挑戦することができます。
ピッチコンテストを通過してアクセラレータープログラムに採択されると、新規事業提案そのものが本業になります。TRIBUS推進室に異動し、100%の工数をかけて、成果発表に向けて追い込みをかけていくんです。
そして最後の成果発表会では、社内外審査員による審査の結果が社内の起業家チームが選ばれ、その後2~3年をかけ、事業として立ち上げられるか事業検証を進めます。
また、TRIBUSのもう一つの大きな特徴として、自らが社内起業家になるだけではなく、様々な参加形態を設けている点が挙げられます。
具体的には、チームメンバーとして関わる方や、新規事業を応援するコミュニティに所属して支援に徹する方、時々イベントに顔を出す方など、とにかく間口を広く設けています。現時点で『サポーターズ』と呼ばれる立場で挑戦者を支援してくれている方は400人以上、コミュニティ参加者は約1,500人規模と、リコーの中ではかなり大きめのコミュニティです。
事務局としても、コアとなるプログラムの運営を支援する事務局以外に、人事や経理といった専門業務をサポートできる事務局のような体制も整えていますね。
JISSUI 猪股 「やらないことの定義」は、大変重要かつ特徴的なコンセプトだと思います。
いわゆる大企業のアクセラレータープログラムには社内で全て網羅していく動きも多い印象を持っているのですが、これらの定義が生まれた背景を伺ってもいいですか?
リコー 森久 単発のビジネスコンテストのようなものはTRIBUS以前にも開催されていましたが、それが文化として根付かないという難しさがありました。
また、ニューノーマルな時代の中で価値提供の領域が拡大し続けており、リコーだけでは『新しい価値の創出』を実現し続けることが難しくなってきていました。
そういった背景の中、自社だけで全てを判断することは正解ではないし、1社単独でやり遂げるというビジネスモデルは世の中的にも破綻しているという考えが、「リコーグループだけで判断しない」「リコーグループだけで取り組まない」に繋がります。
「”いいね”だけで終わらせない」については、世の中のビジネスコンテストではよく起こり得ることだと思うのですが、実行が伴っていなければ、結局単なるガス抜きイベントで終わってしまうんですよね。
「TRIBUSとは何か」と言われたときに「事業創造をする」を第一に掲げているのは、この「”いいね”だけで終わらせない」を強く意識しているからです。
JISSUI 猪股 決して「”いいね”で終わることが悪い」というわけではなく、あくまでTRIBUSでは『事業創造』を重視されている、ということですね。
リコー 森久 そうですね。社外の方からTRIBUSについて、「これは人材育成ですか、組織改革ですか」とよく聞かれます。
あくまでも我々は「TRIBUSが取り組むべき大切なことは事業開発である」と考えていて、その結果として組織変革や人材育成が出てくると考えています。事業を真剣に創る過程で成功と失敗を繰り返すからこそ、とても深いものが出てくるんです。
TRIBUS×出向起業 実現の背景
JISSUI 猪股 一般的な大企業のアクセラレータープログラムにおいて「出口をどう設定するか?」という問いは、大きな論点の一つだと思います。TRIBUSでは、出口を明確に設定されているんでしょうか?
リコー 森久 事務局からは、明確な出口を示してはいません。
むしろ、各チームから自分たちの事業を社会実装する場合の最適な出口を提案してもらって、その実現に向けて事務局やバックオフィスが一緒に模索しています。
brightvoxが行った出向起業事例でも、事務局が出向起業や補助金支援制度についてアナウンスしたわけではなく、チームから「出向起業制度を活用して社外でやってみたい」という提案があり、(リコー本社の)法務、人事、知財の全員で勉強しながら進めていきました。
採択された新規事業が既存の事業部門の下につくと、事業自体がスピードダウンしてしまう事例もあると思います。我々はそれを否定してるわけではなく、事業同士のシナジーが強く連携した方がより成長できるのであれば、その選択肢も許容したいという考えですね。
JISSUI 猪股 あくまでも出口はプロジェクトオーナーが選択して決めるべきということですね。brightvox以外では、どういった出口のパターンがあるのでしょうか?
リコー 森久 他のチームは、今まさに出口を検討している最中です。各チームが様々な方にお話を聞きながら、最良の手段は何なのかを探してる段階ですね。
例えば、最初に採択されたチームは、まずはTRIBUS推進室で自由裁量権を持ってビジネスを加速させていっています。そこでPMF(プロダクトマーケットフィット)実現のため、自分たちのプロダクトサービスの価値を確立させ、出口をどうするか考えているようです。
JISSUI 猪股 事務局とプロジェクトオーナーが最良の手段を一緒に探す建付けは、とても本質的で素晴らしいと思います。
では、具体的にbroghtvoxから出向起業制度に応募したいと相談が来たとき、事務局側はどんなリアクションをされましたか?
リコー 森久 2019年から2020年初頭、出向起業制度の立上げを検討している経産省の担当者からヒアリングがありました。恐らく、TRIBUSが『会社を辞めずに起業する』という出向起業と相性が良いと考えられて、意見やニーズを知るためだったのだと思います。
その時から「いつか出向起業を活用したいチームが出てきたらいいな」という気持ちはあったので、その後broghtvoxから出向起業に関する相談を受けたときは、純粋に面白そうだと感じました。
JISSUI 猪股 出向起業のことは事前にご存知だったんですね。
リコー 森久 そうですね。また、TRIBUSで開催していた社内イベントで、他社の社内起業家の方にお話して頂くことがありました。そういった場でも、他社が出向起業制度を活用されていることは我々の耳にも入っていました。
JISSUI 猪股 出向起業制度について調べを進めるなかで、知財や法務を含め様々な調整があったと思います。どういった苦労がありましたか?
リコー 森久 大きな論点としては人事、知財財産、法務になると思いますが、人事に関しては特に問題はなかったです。
知的財産に関しても、既にbrightvoxチームで『リコーに置いていく知財』と『自分たちが新たに出す知財』を整理されていたので、大変クリアでした。一緒に伴走していた知財の担当者も外部で開催されていたオープンイノベーションにおける知財の勉強会に参加したりしていて、積極的に参加してもらえた印象です。
最後に法務ですが、出向起業に関する契約締結に向けて「出向元企業にはどんなメリットがあるのか」とか「どういうスタンスで契約をまとめればいいのか」という方向性については悩みどころでしたね。
JISSUI 猪股 様々な方と協力的に進められたのは、とてもポジティブな効果だと思います。リコーさんとbrightvoxさんの間ではどういう整理になったのかも伺えますか?
リコー 森久 まず、出向起業制度の根幹となるのは「いかに出向元企業がガバナンスを効かせないようにするか」だと思います。だからこそTRIBUSでも、各チームで自由裁量権を持って様々な判断ができる形態をとっています。
リコーは自分たちで全てを抱え込もうという方針はありません。brightvoxから出た「社外で事業を実現したい」というお話は、「世の中のためになる事業を社内外関係なく支援していこう」といったTRIBUSの仕組みにも繋がります。
今回、「brightvoxの最良な手段は出向起業等の支援制度を活用することである」という旨をTRIBUSオーナーである山下CEO(2022年当時)にも理解して頂き、出向起業を応援する方向性で契約をまとめていくことができました。
JISSUI 猪股 TRIBUSが掲げる「社内だけではやらない」の方針で整理ができたということですね。出向起業を実現するという意思決定ができたのは、周囲と比べて特殊だと思いますか?
リコー 森久 恐らく特殊だろうと思います。
実際に出向起業を行い、TRIBUSからプレスを出したことによって、他社からご相談も頂くんです。「出向起業制度を利用したいけれどどう折り合いをつけましたか」、「ガバナンスや出向元としてどんな利益がありますか」など、社内で壁にぶち当たっている話を聞くので、リコーがそれらを突破できたことは、現時点では珍しいのだろうと思います。
”出向起業”という選択肢を知る
JISSUI 猪股 出向起業にあたって、期待した効果や狙いはありましたか?
リコー 森久 これは少し事務局的な意見ですが…、これまでは大企業に入社すると終身雇用というケースが多かったかと思いますが、これからの企業選びは、終身雇用を目指すよりもそこでどんな経験ができるのか・どんな機会が提供されるのかという観点も、選択肢として大きいかなと思うんですよね。
いずれ自分で新たな事業や会社を興したい方にも「リコーに入社すると、それが可能な選択肢もあるんだな」と思ってもらえるような、これまでとは違った側面でリコーグループを見てもらえることは、期待や効果として考えています。アクティブで新たな価値創出を行っていこうと思われている方にリコーへの興味を持っていただけるのでは、と。
JISSUI 猪股 とても健全なエコシステムを広げていっている印象です。
brightvoxという先行事例が走り始めて1年ほど経ちますが、両社間での変化や進展・リコー内の起業家としてポテンシャルを持ってる方々に、何かしらの効果を感じられますか?
リコー 森久 起業する理由の1つに「よりスピード感を持って事業を進められる」という点がありますが、リコーにいた頃とは全く違った新しい方式で、より性能も品質も向上した製品を新会社として発表されたというのはすごいことです。
それは、今回灰谷さんが選んだ選択肢によって実現できたことだと思っています。ほかにも色々な案件や実証検証の話を聞いているので、我々の期待以上の効果が出てるんじゃないかとも思っていますね。
リコー 生澤 当然、リコー社内の社員に対する影響もあります。
社内起業でスタートしたチームが熱意を持って自ら社外へ出てチャレンジしたというニュースは非常に反響があり、驚きとともに多くの社員が刺激を受けたことと思います。
ただ、一部誤解されがちなのは、たまに「TRIBUSで応募した後は必ず外に出ることをゴールにしなければいけないのでは…」という点です。TRIBUSから生み出される事業が必ず出向を前提にしているということではないですし、カーブアウトが全ての選択肢ではありません。
各事業の成功のため、それぞれのチームにとって最適な選択肢は何かをプログラム全体で考えていくので、いずれかの選択肢を強制することは全くないということは、変わらず伝えていきたいですね。
一方でTRIBUSで採択されたチームが出向起業のような動きをしているという事実を知らない社員もまだまだ多く、事務局としては社内にどう各チームの活動を伝えていくかも課題の一つとして捉えています。
現在、まさに次年度のプログラムの検討をしていますが、そういった新たなチャレンジをしている人々の事例が刺激になることは存分にあると思うので、今後さらに情報の発信を強化していきたいです。
JISSUI 猪股 brightvoxのメンバーとは、現在もコミュニケーションをとられているのでしょうか?事務局としてどういうことを気にされているのか伺いたいです。
リコー 森久 現在も継続的にコミュニケーションをとっています。
「最近どう?」とか、「新しいトピックスある?」とか…。TRIBUS自身もWebメディアを持っているので、「もしよかったらそれも活用して発信してみては」みたいに色々な話をさせてもらっています。
また、最近では私と灰谷さんで外部のインタビュー取材を受ける機会も増えてきているので、そこでも顔を合わせていますね。
JISSUI 猪股 出向起業後、灰谷さん自身の変化は感じられていますか?
リコー 森久 経営者の目線になったことでしょうか…やはりお金の使い方ですね。
これまでは『予算』を使っていましたが、現在は『資本金』を使うことになっていて、キャッシュフローをより意識するようになったという話をよく聞いています。
他にも、リコーの頃はかなり多くのことをバックオフィスの方にやって貰っていたんだな、ということはよく仰っていますね。年度末の税務はもちろん、ちょっとした契約書を作成するにしても、リコーにいた頃は法務部が全部やってくれていたことも、現在は全て自分たちで対応しなければいけません。
他にも、広報、経理、IT、人事、総務、知財 など、勉強しながらすぐにルールを作り動かさなければならず、必然的に出向企業チームのメンバー全員がマルチタスクで動く必要があります。
一方でその辺りの業務に関しては、世の中にスタートアップ向けの様々な支援サービスがあることも教えてくれたりして、私達にとっても色々な気付きになっています。
リコー 生澤 TRIBUSでは、採択された各チームに活動における自由裁量権を与え、自分たち自身がスタートアップを立ち上げた経営者のつもりで資金繰りや事業の成立性を見てもらうことを基本ルールとしています。
しかしながらそれはあくまで管理上の話であって、リコーに所属している限り、実際に自分たちのお金が傷んでいくわけではないというところに難しさもあります。『資金繰りをスタートアップ同等に自分事として真剣に考えられているか』という点は、各テーマの進捗レビューなどでもよく指摘されるポイントです。先日灰谷さんチームにお会いした際、実際に社外の環境に身を置いていることで、その辺りの温度感や覚悟の高さをすごく感じましたね。
JISSUI 猪股 社内で事業を大きくすることが正解な場合もあるので、外に出てその目線を持つことが絶対だとは思いませんが、社外へ出た人と社内で頑張ってる人に、環境の違いはありますね。
リコー 森久 今回は自身の資本も入れたかたちで社外に出たので、一層覚悟の違いはあると思います。
実際にbrightvoxを見ていると、オーナーだけでなく一緒に起業した4人のメンバー間の結束も強まっているな、っていうのは思いますね。
また、先日オフィスを訪問した時、リコー社内からもよくオフィスを見に来たり、話を聞かせてと言われることが多いと聞きました。リコー社員にとっても、出向起業など新しい選択肢があることを知れたことの良さがあるんだろうなと思います。
TRIBUSとリコーが目指すこれからの姿
JISSUI 猪股 最後に、リコーとTRIBUSを軸としたこれからの方針や、出向起業に関する部分についてどう考えていらっしゃるかを伺っても良いでしょうか?
リコー 森久 TRIBUSには、様々な関わり方で参加できます。
事務局としても、社員全員に起業してほしいとは思ってません。それを目指している姿とは思っていませんが、何かやりたい・何か課題を解決したい人が「事業」というかたちで社会実装する選択肢を選ぶことが普通の姿になれば…とは考えています。
皆さんもよくあるかもしれませんが、例えば飲み会の場で「こういうサービスがあればいいのに」とか「こうなればいいのに」とたられば話をしても、翌朝には飲み会での話はとっくに忘れて通常業務に戻っていると思うんです。
こんなたられば話も、「少しエネルギーをかけて事業としてやってみよう」と言う人がどんどん出てきたら、とても面白いサービスやソリューションがどんどん出てくると思っています。
とても崇高な社会的意義がある人たちだけが立ち上げるものではなくて、ちょっとしたことでも、エネルギーをかければ事業を立ち上げるきっかけには十分なり得ることが伝わっていけば、面白いですね。
また、出向起業に関しては、我々としてはあくまでも選択肢の一つに過ぎないというふうには考えています。
当然、今回のbrightvoxの事例は大変貴重なものなのでどんどん紹介していきたいですが、出向起業以外にも様々な出口戦略があると思うので、フラットな姿勢で、社会実装に対して何が一番いいのかという視点はぶらさないようにしたいですね。
弊社の事例を見て、出向起業の制度を活用したいなと興味を持った方へも惜しみなく我々のノウハウを提供しますので、ぜひお気軽にお問い合わせをいただければと思っております。
リコー 生澤 TRIBUSは2023年度で5期目に入ります。
リコーは”自分から手を挙げて新しいことを提案する”ことを最初から得意とする人たちが多数を占めるといった風土ではないと個人的には感じていて、、起業アイディアや起業家マインドを持っていた人によるTRIBUSへの応募はここまでで比較的一巡したといった段階にあります。
今後は応募を悩んでいて踏み出しきれていない人の背中を押してあげるようなこともできればと思いますし、応募すること以外にも、チームメンバーだったりサポートといったかたちでTRIBUSと接点を持つ人たちの層をさらに広げていきたいといった思いがあります。
また、brightvoxの事例をはじめ、過去のチャレンジャー達の苦労話やノウハウも含めた活動実績を発信し続けることで、様々な刺激をグループ社員全体に与えていきたいです。
5期目はプログラムとしての成果に対する目線も強まってくる時期です。
初代である2019年採択チームの出口の示し方であったり、その先にある今後のチームの選択肢について、事務局としてもより事業創出の可能性を高められるようなプログラム設計に挑戦し続けたいと考えています。
(協力:株式会社リコー、インタビュアー:JISSUI 猪股 涼也 、ライティング・編集・デザイン:しゅうまい)
自社で『出向起業』を検討したい方へ
『出向起業』は社員のセーフティーネット(収入、福利厚生等)が確保された状態で新規事業創出に従事することができる仕組みであり、同時に企業としても外部資金を活用して新規事業を試すことができる点にメリットがあります。
経済産業省では、新規事業創出に係るリソースの一つである人材に着目して、大企業等の人材が新規事業創出に挑戦することができる『出向起業』を後押しするための支援事業(事務局:一般社団法人社会実装推進センター)を行い、『出向起業』の活用ノウハウを手引きとしてまとめています。
本手引きには、「出向起業とは何か?」を紹介するとともに、『出向起業』を行うにあたって想定される懸念点、その解決策、先行事例等を記載しています。
本手引きを通じて、『出向起業』に関する理解を深め、起業が更に新規事業創出に挑戦しやすくなることによって、イノベーション創出の一助となれば幸いです。
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