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カーブアウトスタートアップ設立への準備(マインドセット編)|大企業におけるカーブアウトの意義と出向起業 #5

※本記事は、当団体が制作したWebサイトの掲載記事を再編集後、移設しており、肩書・内容は掲載当時のものとなります。

こんにちは。みらい創造機構の高橋です。

本連載の第五回目となる本記事では、皆様が出向起業 / カーブアウトスタートアップの設立を実施するにあたって、準備しておくべき心構えについて、整理させて頂ければと思います。(前回の記事はこちら

1.カーブアウト起業に向けたマインドセットの準備について

1.1 自分で意思決定をする癖をつける

出向起業の事業化支援機関として、起業された皆様と日々コミュニケーションさせて頂いておりますが、カーブアウト型で起業をする方々の多くは、一般に若手から中堅層の職員の方々が多いように感じます。

日常の業務では当然自身の強い思いをもって事業開発に取り組んでいると思いますが、新しいことに予算を使う、他社とパートナーシップを結ぶ等、大小様々な意思決定の際には、社内での上長の承認を得る為に稟議を上げる必要があるのではないでしょうか。

一方、起業をしてCEOとして活動を始めると、他人からの承認を得るために資料を作るのではなく、周囲の様々な情報をもって自身が最終意思決定をするラストマンとして振る舞う必要があります。

また、ほとんどのケースで情報が完全に揃うことはなく、意思決定までの時間が極端に短いことも多いです。折角覚悟をもって決めた事項に対して、社内のメンバーや投資家から反対の意見を受けることもあります。

「承認を得るための思考」と、「大きな責任と限られた情報・時間の制約の中で、最終意思決定をするための思考」には大きなギャップがあるように感じております。取り組むこと、取り組まないこと、を迅速に自身の責任で決定できるようになるには、経験を積むしかないと思います。

日々の業務において稟議を上げる際、自分がその事業の経営者として職員の人生を預かっていたとしても同じ結論に到達する、と自信をもって言えるまで考え抜くことから始めてみるのは如何でしょうか。起業をする前に改めて、目の前の業務を自分事として捉え直してもらえると良いのではないかと思います。


1.2 自分で自分を評価する癖をつける

現在、皆様の業務において上長の方はいらっしゃいますか?

四半期、半期、年次といった節目において、上長との面談によって評価され、ボーナスが増えたという嬉しい経験も記憶に残っているのではないでしょうか。

起業をしてしまうと、自分の日々の活動を評価してくれる上長がいません。勿論、投資家がいれば、定期的なミーティングの場で事業の進捗をみてフィードバックを受ける機会はありますが、日々の業務オペレーションにおけるプロセスの評価は中々難しいものです。また、悪い結果が出てしまってから行動を変えても、大きな機会を逃してしまうこともあります。そのため、自分の行動を自分で評価し、日々改善していく行動規範が重要になります。

現在の企業に所属して取り組む業務では、どうしても上長の評価が重要視されてしまいますが、自身の活動が事業の成長という目的に資する活動になっているか、都度評価する癖をつけるのは如何でしょうか。

例えば、顧客とのミーティングの際に、彼らの発言や一挙手一投足から、ミーティングの目的達成のために最善に振る舞えていたか自分で評価し、反省点があれば改善して次回のミーティングに臨む。提案資料を顧客に提示した際にきた質問から、質問に答えるだけでなく、疑問点が生まれてしまうような構成や表現になっていないか検討する等、他人からの直接的な評価に依存するのではなく、自身の周りのあらゆる情報から、行動を評価し改善していく癖をつけることが、起業に向けた良い準備になるのではないかと思います。


1.3 自分から機会を見つけ飛び込む癖をつける

企業に所属していると、どうしても日々のオペレーションに忙殺され、中々社外とのネットワーク開拓や、事業に直接関係しない活動に時間を取れないことが多いのではないでしょうか。

私も商社で働いていた時は、目の前の業務に全力で取り組んでおり、(どちらかというと)社外とのネットワーク構築や、ビジネスに関係のない活動を軽視していたように思います。また当時を思い返してみれば、社外の人と個人的な繋がりを持ったとしても、事業に活用することは難しかったような気がします。

一方、起業をした際は、個人的な関係性に事業の小さくない要素を依存することになり、日々のちょっとした活動からビジネスの大きな転換点に至るまで、多面的に助けられることが多かったと記憶しております。

このような機会が巡ってくるのを待つのではなく、自ら飛び込んでいく行動力が、中長期的には良い結果に繋がるのではないでしょうか。

「日本は起業に向いていない環境である」というコメントは良く耳にしますが、私の場合、起業をしました、と言ってネガティブな反応を受けたことは数えるほどであり、多くの人から「手伝えることがあったら何でも言って欲しい」と連絡を頂くことができました。まだ起業前の段階から、「今度~というビジネスで起業しようと思っています」と、色々な機会に飛び込んでみるのはいかがでしょうか。


1.4 自分だけでなく他人を巻き込む癖をつける

以上、経営者として起業家として、スタートアップのCEOとして、自分自身の行動の大切さを強調致しましたが、どんなに頑張っても人1人ができることは限られています。

社内のメンバーや投資家等の関係性の近い人だけではなく、外部のパートナー、ユーザー、(時には競合企業も含めた)同じ業界の企業、全く違う業界のスタートアップ企業等、多くの人や企業を巻き込む癖をつけていく必要があると思います。

CEOは特別な役割と責任を持ちますが、私はあくまで一つの職業であると考えており、モノを作るエンジニア職、モノを売る営業職、のようにCEOは単に会社を大きくするという目的にコミットした職業なのではないでしょうか。

今から自分自身のなりたいCEOという職業に適した職業倫理を定義してもらい、目の前の事業を成長させるために、周りのステークホルダーを巻き込みながら、最善と信じられる行動を継続してもらえればと思います。


2. 最後に

本稿では、少し抽象的な起業に向けたマインドセットについて整理致しました。
次回は、カーブアウトスタートアップの起業に向けたスキルセットについて整理していきたいと思います。


解説者 高橋 遼平氏

株式会社みらい創造機構:執行役員/パートナー

京都大学経済学部卒業後、三菱商事株式会社入社。建設業界向けクラウドサービスの事業開発に従事し、同事業のカーブアウトに貢献。 同社退職後、医療系大学発ベンチャーを起業し、大手事業会社へのM&Aを実現。 また、戦略コンサルティングファームのアーサー・ディ・リトル・ジャパン株式会社にて、新規事業戦略策定等に従事。みらい創造機構では、キャピタリストと投資先の経営支援に取り組むグロースチームを兼務。
東京工業大学 環境社会理工学院 イノベーション科学系卒業。博士(工学)


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