見出し画像

「出戻り人材」雇用のために企業は何をするべき?出戻り経験者が答えた、重要視してほしいポイント

終身雇用・年功序列といった伝統的な雇用形態が崩れ、人材の流動性が高まっているなか、晴れて新卒で大企業に就職したのち、キャリアアップ・スキルアップのためスタートアップを含む別の企業への転職や起業をする気運が高まっている。

一方で転職を重ねる人々のうち、転職する先として、ファーストキャリアとして選んだ大企業に戻る、いわゆる「出戻り人材」も存在する。

出戻りを経験した103人に行った調査の結果、その8割が出戻りのキャリアに満足していることが明らかになった。満足度の高い出戻りだが、今後さらに普及するにはどのような施策が必要なのだろうか。

■この記事のサマリー

  • 出戻り人材の8割が、「出戻りして良かった」と回答している。

  • 一方で、出戻り社員が活躍する会社を作るための努力は必要。最も行うべき施策として出戻り人材が挙げたのは、「出戻り社員を受け入れる風土の構築」であり、「退職者は裏切者」、「一度辞めた会社には戻れない」などの固定概念を持つ企業や就労者をなくす取り組みが求められる。

  • 初入社時と比較すると、出戻り後は「裁量」や「年収」を重視する傾向にあり、出戻り人材が身に着けたスキルが正当に評価される制度を設計し、それを退職者に打ち出していく姿勢が必要。

出戻り人材の8割が出戻りに満足。初入社時と出戻りでは何が変わった?

勤めていた企業を一度退職し、別のキャリアを進んだのちに、元いた企業への再就職を決めた出戻り人材。彼らは、「出戻り」するキャリアについてどのように感じているのだろうか。

出戻りを経験した103人に出戻りの満足度を尋ねたところ、約8割が「とても良かった」あるいは「良かった」と回答している。

※出戻りの満足度

一度退職した企業への再就職、退職前と出戻り後では一体何が変化しているのか。初めて入社した際と比較して出戻り後に起こった変化として、以下のようなコメントが挙がった。

「出戻りまでに勤めていた企業で身に着けたスキルを活かし、専門職員として一定のポジションが確保できている。そのため、裁量や社内の存在感の面でポジティブに働けている。」(電気(大企業)→製造(大企業)→電気(大企業))

「転職してスキルを獲得したことで、仕事の裁量権が拡大し、新しくやりたい分野の仕事ができるようになった。」(情報サービス(大企業)→情報サービス(大企業)→情報サービス(大企業))

元いた企業の風土を十分に理解し、他社で身に着けたスキルをも兼ね備えた出戻り人材は、出戻り後に優れたパフォーマンスを発揮し、それが出戻り人材自身への貢献実感や満足感に繋がっているのだろう。

出戻り人材が考える、出戻り普及のために最も必要なことは「出戻りを許容する企業風土」

満足度の高い出戻りであるが、出戻り人材活用はまだ一般的なものではない。

出戻りが今後普及するために企業が行うべき施策を尋ねた際、出戻り人材が最も多く挙げたのは、「出戻り社員を受け入れる風土の構築」、次いで「多様なキャリア・働き方の支援」、「再雇用制度や給与・評価制度の見直し」であった。

※「一度退職した企業への出戻り」が今後普及するために、企業はどのような施策を行うべきか

出戻りが普及するために必要な施策として、以下のような意見が挙げられた。

「「一度辞めた会社には戻れない」という固定概念があるので、まずは辞めたとしても戻れる可能性があるということを知ってもらうべき。啓蒙には転職エージェントなどが関わるのもよいのではないか。」(保険媒介代理(大企業)→保険サービス(スタートアップ)→保険媒介代理(大企業))

「現在の出戻りは個人レベルでの人間関係に依存しているが、現場レベルで戻ってきてほしい人を積極的に再雇用する仕組みを整備する必要がある。企業は求職者(アルムナイ)に対して、カジュアルに話を聞く機会を設けても良いのではないか。」(食料品製造(大企業)→金融(大企業)→食料品製造(大企業))

「既存の評価制度や組織とは切り分けて、中途社員や出戻り社員の育成・評価のシステムを独立して形成すべき。出戻った人向けのビジネススキルを測る試験の設定も有効ではないか。」(自動車(大企業)→コンサル(スタートアップ)→自動車(大企業))

根強く残る「終身雇用」や「年功序列」など、日本型雇用の仕組みを覆すような企業風土の刷新や制度の構築が求められているようだ。

少しずつ増えてきたアルムナイ制度。その施策効果を高めるには? 

近年、再雇用の強化を図るため、企業がアルムナイ組織*を構築し、情報発信を行う事例が増えている。

一方、今回出戻り人材に対して行った調査では、退職期間中の出戻り先との接点のうち、最も出戻りに繋がったと考えられるのは「元同僚との繋がり(飲み会などの個人的な交流)」であった。

企業で行われている再雇用に向けた取り組みを起点とした「アルムナイ組織での繋がり」による出戻りの割合は僅かであることから、企業は退職者に対しての公式の情報発信を今後意識的に実施する必要があるだろう。

それでは、企業としてはアルムナイ組織を通じてどのような情報発信をすることが有効なのか。出戻りにあたって、出戻り人材が重視する点から考えてみるのがよいだろう。

出戻り人材に対して、出戻りした企業に初めて入社した際/出戻りした後に重視していた点を尋ねたところ、出戻り後は「裁量」、「年収」の重視度合いが初入社時と比べ高まっていることが分かった。

※出戻りした企業に初めて入社した際/出戻りした後、重視していた点(上位7項目)

「裁量」、「年収」を重要視するようになった理由として、以下のようなコメントが挙げられた。

「当初は新卒採用での入社であった為、正直なところ会社に求めるものについて確固とした軸がなかったが、経験を経るにつれ自身の裁量等の面で求めるものが大きくなった。」(化学(大企業)→自動車(大企業)→化学(大企業))

「新卒入社時の20代と30代でキャリア形成のフェーズが異なるため、会社に求めるものが変化した。20代:経験値と目指すべき具体的なキャリアの軸がないため、社員・職場の雰囲気や通念的な評判でしか自分に合うかどうかが判断できない。30代:結果を出していかに年収面で評価してもらえるかが重要。」(監査法人(大企業)→卸売(大企業)→監査法人(大企業)) 

外で経験を積んだ人材は、身に着けたスキルを、より正当に評価されることを望んでいる。

アルムナイ組織を構築し、それをうまく活用するには、出戻ってから実際にそのような環境が整備されていることを情報発信し、退職者に出戻りをポジティブに捉えてもらえるように努力が必要だろう。

今回の調査を通じて、出戻り人材の多くが「出戻り」のキャリアに満足していることが分かった。一方で、出戻り人材の活用はまだ一般的なものではないため、出戻り社員が他社での経験を活かして活躍できる会社を作るための努力は必要だ。

企業は、アルムナイ組織の構築に留まらず、退職者にとって出戻りが有益なキャリアであると捉えてもらうために、他社での経験に対して何か利点や優遇のある制度を設計にも組み込んでいくことが求められる。

アルムナイ組織:アルムナイとは英語で「学校の卒業生・同窓生」を意味することから、派生して企業の離職者やOB・OGという意味で使用される。アルムナイ組織とは、そうしたアルムナイを組織し、元社員と定期的にコンタクトを持ち、自社の現状等の情報共有や、アルムナイを集めた懇親会等を開催する組織を指す。

調査報告書をDLする

終身雇用や年功序列など、これまでの雇用形態は崩れ、最近では人々の働き方も大きく変わっています。

新卒で大企業に就職したのち、将来のためにスタートアップなど別の企業への転職や起業する傾向が強まる一方で、過去に大企業を離れて転職を重ねた人の中には、再びファーストキャリアとして選んだ大企業へと戻る、いわゆる「出戻り人材」の活用が注目されています。

本記事に記載した内容を含め、実際に出戻りを経験した103人に行った調査の結果が公開されました。出戻り人材の活用に興味がある企業から個人まで幅広い方にご参考いただけますと幸いです。

■大企業への出戻り人材に関する調査報告書
資料をDLする

また、本調査レポートの解説記事は本記事のほかに、下記のハッシュタグからご覧頂けます。興味をもって下さった方はぜひ他の記事もご一読いただけますと幸いです!


最新情報をキャッチアップする

『FLAG』では、「社会課題を解決し得る、新しい技術やアイデアの“社会実装”を推進する」ための"実証事業"に関する公募情報、実践的なコンテンツを配信しています。

公式SNSのフォローよろしくお願いいたします。

公式Twitter
公式Facebook

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!

イノベーターに役立つ記事、公募の最新情報をTwitterで発信しています。ぜひフォローしてください!