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【転職者インタビュー】プロボノをきっかけに起業家へ|わたしがスタートアップを選んだ理由 #6

※本記事は、当団体が制作したWebサイトの掲載記事を再編集後、移設しており、肩書・内容は掲載当時のものとなります。

スタートアップキャリア総研では、大企業人材が経験を活かしてスタートアップで活躍するネクストキャリアを考えるきっかけを提供しています。

”ミドル世代のキャリアチェンジ”にフォーカスを当てた本回は、スタートアップでのプロボノ活動をきっかけに、起業して独立された自ら創業されたF氏にお話を伺いました。

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「会社にいる間」に「会社の外」の経験・評価を求め、スタートアップのプロボノ活動へ参加

―― 早速ですがFさんのキャリアについて教えてください。

F氏 学生時代はバンド活動をしていました。バブルの頃ですが、当時はプロになりたいと思っていて、TM NETWORKさんとか聖飢魔IIさんとかとコンテストで競い合っていました。卒業後は照明の技術研究所に就職したのですが、働き方が合わなくて1年半ほどで退職し親戚がいた南の島でしばらくのんびりしていました。

その後、帰国して不動産会社で資産運用の仕事をしたのですが面白くなくて、放送局のキャスターに応募したらたまたま通っちゃったんです。キャスターの仕事をしていたらディレクターの仕事が面白くなってきて、映像をつくる側に回りました。それから20年ほど番組制作を経験した頃に番組以外の事業を開発するという部署ができ、アニメーションとか、当時大ヒットしたプロジェクションマッピングとか、新しい事業をやっていました。その後、映像技術開発の仕事をはさんで、人事へ異動になり2年半くらい働いて、その後独立をして、現在は映像をはじめとしたプロジェクトのデザイン・プロデュース、また人材育成に関する仕事をしています。


―― 独特なキャリアですね。独立に至った経緯をもう少し教えていただけますか。

F氏 自分でやりたいことをやろうと思ったんです。定年退職になった先輩たちをお疲れ様でしたと送り出しますが、寂しそうな様子だったり、会社に遊びに来たりとか…。人間は歳をとったら自然に枯れてかっこよくなるというのは大間違いで、やることがないと急速に老けてしまったり、なろうと思うものがないと何にもなれない。そういう現実を見たんですよね。

言ってしまうと、サラリーマンは牧場の牛のようなものだと思っていて、幼稚園のときから会社に行く練習をしているのではないかと(笑)。そうして大人になって、大企業に勤めたとして、そこでは正しいことはひとつ「言われたことを一番早く上手にできた人が偉い」と言われる。そういう環境で頑張っていたのに、ある時、いきなり「この生活は今日で終わりです。あとはご自由にどうぞ。」と牧場から出るように言われてしまう。

そうなって慌てないようにしたい、自分が50歳になる頃には会社に半分・外に半分にしておきたいと思うようになりました。会社は50歳とかその前あたりで急に評価のカードが減るんです。40歳前後までは「あなたは出世するね」と言われていたとしても、ある時からいきなり言われなくなります。なぜならそれ以上のポジションは枠が決まっているから。そうすると評価のカードが減って、これまでと同様に働いても周りから評価されなくなるんですよね。

そうなると、会社にいながら、ある意味遊んでる人(笑)のほうが生き生きしてくるんですよ。実は海辺に家を持っているとか、週末農業やっているとか。自分の場合はスタートアップでのプロボノ活動でした。会社が副業禁止だったのでプロボノとして参加しましたが、自分のスキルや価値がどう役立つのかを試してみたかったんです。そうこうしているうちに、会社を辞めて独立してしまいました。


―― プロボノとして社外で働いてみた結果として、自分は独立してもやっていけると思われたのでしょうか。

F氏 いえ、とんでもない。自分でどれくらいスキルがあるのか、これでやっていけるかとかはわからなかったです。独立したのは「well-being(=精神的、健康的、社会的に良い状態で生きること)」のためで、自分が自分自身の人生をどんなものにしたいのかと考えた結果です。ずっとサラリーマンとして評価される環境で生きてきて、年をとるごとに評価カードが減って…そういう先輩たちの姿を目の当たりにして、自分はどうなるんだろうと思ったことが一番のきっかけです。自分で自分の山を登り、やりたいことをやる、いよいよ死ぬという時に「えっ!?これから楽しいことやろうと思ってたのに!」と後悔しないようにするためですね。

元々、こういう思いは漠然とは持ってはいましたが、プロボノを経験して、現実を突きつけられたということもあります。「well-being」な生き方を学生や子供に教えたいという強い思い、サラリーマンのwell-beingも目指したいし、関わりのあった自治体の方々とも自分たちの街をよくしたいという思いが共通であることもわかった。そういう自分の思いを自分自身に現実として突きつけることができたということが大きいですね。

それにプロボノを経験したことで、自分で稼げるところと稼げないところが明確になってきたということもあります。これくらいは稼ぐことができそう、というのがわかったことで、やってみよう!なんとかなるさ!と思いましたね。

プロボノをするならば、自分のためにも会社のためにも「本気」で活動するべき

―― プロボノでは具体的にどんな活動をされていたのでしょうか。

F氏 プロボノとして参加したスタートアップは、熊本県を拠点に活動する、EVと超伝導技術の開発や新エネルギー分野の研究開発、VRコンテンツを中心とする映像制作等に取り組んでいる会社でしたが、最初は事業が多岐に渡りすぎてよくわからなかったんです。当時所属していた会社のプロボノプログラムの一貫で参加したのですが、代表の方の目が”カシッ”としているなと思い、その直感で参加を決めました。自分は放送業界から来ているので、テレビと関連することや関心があった被災地支援のコンペに参加するとか、そういう仕事をさせていただきました。

プロボノって難しいんですよね。大企業の人はミッションがあれば動くけれど、ミッションがなければ動けない。そういう仕事のやり方に染まった人がプロボノでスタートアップに入ると、MTGを重ねても雑談だけでプロボノ期間が終わっちゃったりすることもある。ただ、自分が参加したスタートアップは、これをいつまでにやってくださいと、いきなり本業をガンッと投げてくるんです。チームの一員としてアクションすることをいきなり求められる、それが結果よかったと思っていて。そういうプロボノ活動の方がうまくいくように思います。

プロボノは無給だからこの程度でいいとか、3ヶ月やってみるだけだからこのくらいでとか限界を決めてしまうのではなく、思いっきりプロボノをする方ががいい。そうすることで自分の力がわかるようになりますよ。


―― 本業があるなかで本気でプロボノをするのも、大変ではありますよね。

F氏 やりたいこととプロボノの内容が一致すれば、土日も苦にならないですよ。ちょっとやってみようぐらいの気持ちでは絶対に離脱します。”本気”でプロボノをする先に新しい扉が開くんじゃないでしょうか。自分の人生のためにも他の会社のためにも本気で働く。本業の牧場でエサをもらいつつ、牧場の外の森でチャレンジするんです。

大企業の人がプロボノで働いてみて驚くのは、お金ですね。大企業だと毎月振り込まれる給料が、どこからお金が入ってどこで自分の収入に変わるのかというのが、直接お金を扱う部署にいなければ見えにくいですよね。

ですが、プロボノでスタートアップに行くと「この人どうやって食べているんだろう」「子供もいるんだ、どこに住んでるんだろう」って素朴に思うんです。どのくらい稼がなきゃいけないっていうリアルなお金を触る感覚を得られるんですよね。その感覚を得たことで、とても自分ではできないと大企業を辞められなくなる、そういう判断も、本気でプロボノを経験することでわかることだと思います。


―― 最後に、これからスタートアップのキャリアを考える方へ応援メッセージをお願いします。

F氏 あなたは自分の山を登っていますか?いろんなものに縛られていませんか?人生は一度きりですが、自分の山をわかってますか?それがわかってたら登れますか?

登り方は色々あると思います。企業にいてある程度の安定を確保して、兼業副業やプロボノをするのもひとつの方法ですし、思い切って転職してしまうのもそのひとつです。食べる分をちゃんと確保できたらどんな方法でもいい。やりたいことが見つけることが一番大事でそれがみつかったら、「well-being」が近づいて来ると思います。

人は多様でいい、ということをお伝えしたいですね。

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