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【出向起業|体験談】メブキ株式会社 代表取締役 大槻 陽一

※本記事は、当団体が制作したWebサイトの掲載記事を再編集後、移設しており、肩書・内容は掲載当時のものとなります。

不動産管理事業の深い現場理解から、付帯商品に特化したDXツールを開発

―― 今年度から始まった”MBO型起業”枠での採択ですが、まずは事業概要を教えてください

大槻 不動産管理会社向けに、ITサービスを提供している会社です。私自身がIT業界出身でありながら、宅建業を取得し不動産仲介等を行う現役の不動産業者でもあり、業界のニーズを捉えた開発を行えることが特徴です。2015年に創業し、2018年に某不動産会社グループが大株主となり、共同事業開発を進めていました。

自社製品としては、入居者様向けの福利厚生サービス「SPREE(スプリー)」、そしてβリリース済で正式版に向けた機能開発中の、不動産管理会社様向け業務DXツール「Roomwith(ルームウィズ)」があります。これらの自社製品による事業拡大を加速するために、今回MBO型起業を実施することとなりました。


―― Roomwithはどのようなサービスなのでしょうか。

大槻 Roomwithは「保険」「24時間サポート」などに代表される、賃貸に付随する「付帯商品」の申込・会員管理の実務をデジタル化・自動化するサービスです。SPREEを運営していくなかで、様々な管理会社様の現場と関わることで、本サービスの発想が生まれました。近年、複数の付帯商品をパッケージ化してサブスク商品とする管理会社様が増えてきているのですが、商品ごとに紙の申込書を回収しそれぞれの業者に転送するなど、付帯商品に関連する業務は現場負担が大きくなりがちでした。

Roomwithでは管理会社様毎にオリジナルの電子申込・会員サイトを生成し、申し込み内容や退去情報を各サービス事業者に一括で自動連携できる仕組みがあり、これらの業務のDXを推進することができます。


―― “付帯商品”から参入するという戦略なのですね。

大槻 賃貸の「申込」や「契約」のDXを進める競合商品が多くあるなか、付帯商品に特化することに意味があると思っています。実は付帯商品は、不動産管理会社の利益の10-20%を占めるともいわれ、管理会社様にとっては非常に重要な領域です。よって付帯商品をスムーズに提供するためのオペレーションも重要な業務なのですが、これまでは現場の営業担当者のマンパワーに依存していた部分がありました。

まずはRoomwithで付帯商品に関する業務をデジタル化・自動化することで、ニッチな領域で不動産管理会社様の生産性向上にもっとも繋がるサービスを構築していきたいと思っています。

また、今後の拡大可能性として、入居者とのコミュニケーションツールとしての機能を持たせるなど、周縁領域への進出も考えています。

提供サービス「Roomwith」

不動産業界全体にサービス展開を進めるためにMBO型起業を実施

―― MBO型起業に至った経緯を教えていただけますか

大槻 これまで、全国に店舗を持つ不動産会社グループの資本配下であるということは、SPREEの開発・提供においては大きなシナジーがあり、サービスもある程度軌道に乗ってきていました。一方、私も経営者として最終的には自身の持株比率を高めていきたい想いもありました。

Roomwithなどの新規事業開発を進めているなかで、グループの販路に限らないより広いサービス展開を推進していける体制を整える必要性を感じていたこともあり、自身での株式買取に関して株主と協議を重ねていました。そのタイミングでMBO型起業の補助事業のことを知り、それも後押しとなって合意に至りました。


―― MBOの完了までに苦労された点はありましたか

大槻 バリュエーションの設定に関しては非常に悩み、株主とも議論がありました。どうしても売り手と買い手で利益は相反します。買取側としては、現状の会社の価値を正当に評価し適正な価格を設定したいですが、売却側としては、投資時価格に対しての損益がどうかというロジックも働くことになります。これまで様々な面でサポートを頂いていたこと、今後の共同事業の継続、経営者として株主に損をさせないという感情の問題もありました。

最終的には、今後の事業での関係性も良好に保てるような、両者が納得いく金額での買取が実現したと思っています。MBO後1、2年が本当の正念場だと思いますし、私としては今後の成長で「安く売ってしまったな」と思わせることがある意味の恩返しかなと考えています。


―― 資金はどうやって集めたのでしょうか

大槻 ここも関係者には非常にご協力いただいた部分なのですが、支払いスケジュールや実行のスキームには私の現実的な資金的余力を最大限配慮いただきました。とはいえある程度まとまった額が必要ということもあり、顧問税理士や弁護士の助言を頂きながら実行計画を立てました。買取資金の一部はメブキから私個人に貸し付けを行い、役員報酬から返済する方法を取りました。今回は補助金スケジュールなどもタイトだったためスピード優先で組み立てましたが、もう少し時間があれば、金融機関からの借り入れやSPCを設立しての買収スキームなども検討できたと思います。


MBO後も適切なパートナー関係を継続しつつ、退路を断ってスタートアップとして再出発

―― MBO後の関係性はどのようになりますか

大槻 SPREE等の既存の共同事業は残り続けます。本当にユーザーにとってメリットがあるサービスなら続いていくということかと思いますので、緊張感を持って期待に応え続けていきたいです。

Roomwithなどの新製品についても、引き続きこれまでの販路を活用して提案をさせていただく予定です。フランチャイズはそれぞれ独立した企業ですし、これまでのサービス開発を通して業界団体等との取引関係を作ることもできました。良いサービスを業界全体に提供していくことで、健全な関係性を継続していければと思います。


―― MBO前後で気持ちの変化はありましたか

大槻 調整をしている段階では気持ちの変化はないだろうと思っていましたが、実際にMBOが完了した瞬間は心境に変化がありました。借入をして株式を買い取っていることもあり、背水の陣まではいかずとも、良いことも悪いことも全部自分に跳ね返ってくる、自分資本の会社であることが間違いなく今までと違います。

前に進むしかないと自分を鼓舞する効果も期待していて、ポジティブな緊張感とやる気を感じています。


大槻 陽一(おおつき よういち)氏

東京大学卒業後、ヤフー株式会社で事業企画・新規事業開発に従事。
2015年メブキ株式会社創業。不動産仲介・管理を行いながら、宅建業者向けITサービスの開発を推進。
2020年、某不動産会社との共同事業「SPREE」をリリース。
2022年、賃貸付帯商品のDXツール「Roomwith」をリリース。

「不動産管理会社向け業務DXツール『Roomwith』 」について

「Roomwith」は不動産管理・仲介業者様が取り扱う「賃貸付帯商品」に特化した業務デジタル化ツールです。

24時間駆け付けサービスなどに代表される付帯商品は管理会社様の重要な収益源である一方、そのオペレーションにはアナログが多く残り、複数の付帯商品を取り扱う場合などは大きな現場負担が生じがちでした。Roomwithを導入することで、管理会社様は複数の付帯商品の申込を簡単に一括電子化することができ、会員管理や関係業者への情報共有もRoomwith上で完結するため、従来より効率的かつセキュアに付帯商品に関するオペレーションを構築していただけるようになります。

■会社概要
・住所|東京都千代田区神田錦町3-2-2 三基ビル3F
・問い合わせ先|info@mbk-inc.co.jp
・WEBサイト|https://mbk-inc.co.jp

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