【出向起業|体験談】RainTech株式会社 代表取締役社長 藤井 聡史
Q.これまでのキャリアについて教えてください。
北九州高専の機械科への入学から、私のエンジニアとしてのキャリアがスタートしました。3年次編入で広島大学、同大学院で機械工学を学び、2010年に株式会社デンソーへ新卒で入社。生産技術職として製造部門に配属され、自動車用熱交換器の工程設計、生産性向上、品質改善などの業務に従事する中で、自動化やIoT、IT、AIといった最新技術を積極的に活用して稼働するラインに実装する経験を積みました。
入社から10年ほど経った2020年頃から、新しい領域に挑戦をしたい気持ちが芽生え、社内の有志活動団体に運営メンバーとして参画しました。そのうち、自分自身でもビジネスプランコンテストに挑戦したいと思い、愛知県で開催されたAICHI STARTUP DAY 2021に応募、そこでファイナリスト選出されたことをきっかけにRainTechの前身となる活動をスタートしました。
その後、2022年にRainTech株式会社を設立、デンソー社内では私自身の社外活動による経験を活かすべく2023年に新規事業開発部門へ異動させていただき、7月から出向起業となりました。
Q.アイデアを事業化、出向起業へと行動に移された理由を教えてください。
私は愛知県在住なのですが、2021年に隣県である静岡県で発生した熱海市伊豆山土石流災害が大きなきっかけになりました。
共に暮らす子供達と自分自身も成長しながら生きていきたいと強く願う一方で、大規模な自然災害に巻き込まれた場合、その願いは一瞬で奪われるということを伊豆山土石流災害で感じました。自分も他の誰にもそんな経験をしないで済むように、自分ができることは何かないかを考えました。
市場調査を行う中で、防災分野ではイノベーションはあまり起こっておらず、最新のテクノロジーを活用することで多くのことが前進するポテンシャルがある一方で、防災は様々な課題が混在していることに気づきました。
そこで気候変動により加速度的に悪化している異常降雨に着目し、もっと緻密な降雨量測定が適切な避難行動判断には必要という仮説検証を行いたいと考えたんです。
ボランティア風土が強い「防災」という分野にとって、持続的にイノベーションを起こし続けるためには事業として成立させること、一個人や団体のボランティア活動ではなく、あくまで事業(ビジネス)として成立させることが必要と考え、自他共に認識して共創を進めるためにも法人として登記、起業することになりました。
Q.出向起業制度の活用にあたって、社内調整はどのように進めめられたのでしょうか。
昨年度までは副業・兼業制度を利用してRainTech事業を進めてきましたが、今年度は小規模ながら売上が立ってきたことからフルコミットしたいと考え、当時の上司へ相談しました。
本来、時間をかけて検討すべき内容にも関わらず、今回の公募に向けてシナジーを生みやすい新規事業部署への異動など、短期間での関係各所との調整は苦労しましたが、関係者一人ひとりは今回のような挑戦が今の時代に必要であると、前向きに社内調整を進めていただいたことは非常に嬉しく、有り難く感じています。
Q.出向起業への応募に対して、周囲の方の反応はいかがでしたか。
仲の良い社内外の仲間は心配してくれていたのでよかったね、とこれからの挑戦に対してポジティブな反応をもらっています。家族には、出向起業が叶わなければ独立することも前提に伝えていましたので、大変喜びましたし、同時に安堵したようでした。
Q.まず実現したいこと、目標やビジョンがあれば教えてください。
昨年度までは行政(toG)がメインユーザーでしたが、今年度は企業(toB)への展開を計画、推進しています。緻密で正確な降雨量・水位・浸水の観測データを必要な人へ最適なタイミングで伝えることで安心安全を支えると共に、中長期では取得した独自データをもとに新たなソリューションを開発、拡大していく計画です。
必要とする人に必要な情報が確実に届くように、その障害となっているものを打ち崩していきたいと思っています。実測、予測を駆使して「雨の非常ベル」となり、一人ひとりの安心安全を守ることで「自然災害による死をゼロ」を目指していきます。
Q.出向起業にあたっての意気込みをお聞かせください。
多くの人の応援と期待を頂けたことで今回の出向起業に挑戦できたと実感しています。
RainTechを立ち上げた想い、価値観をしっかりと軸に持ち、自己実現をしながら応援と期待に応えられるように価値あるものを創り上げたいと思っています。
RainTech株式会社 代表取締役社長 藤井 聡史
「低コスト気象観測IoTデバイスを活用した地域特化型気象・防災情報伝達システム 」について
低コストな気象・災害予兆観測IoT機器を開発、提供し、地域毎に異なる異常降雨・災害予兆の状況を正確に捉え、必要な人々に本当の「いざ」をお知らせするサービスを開発しています。
気候変動によってゲリラ豪雨などの異常降雨が年々増加しており、気象庁でも正確な観測、予測ができなくなってきています。
その一方で、災害発生前に判断するための情報のほとんどが気象庁の一次情報に頼っています。本当に災害リスクが高い地域、場所ではマクロな気象情報だけでは不十分であるため、地域の知恵と経験をもとにミクロに気象・災害予兆を観測、発信することで信頼できる行動のきっかけを提供します。
最新情報をキャッチアップする
『FLAG』では、「社会課題を解決し得る、新しい技術やアイデアの“社会実装”を推進する」ための"実証事業"に関する公募情報、実践的なコンテンツを配信しています。
公式SNSのフォローよろしくお願いいたします。