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【インタビュー】「成功も失敗も中長期的なキャリアで捉えればプラスになる」、”テック系”へ挑戦する人材をサポート

※本記事は、当団体が制作したWebサイトの掲載記事を再編集後、移設しており、肩書・内容は掲載当時のものとなります。

スタートアップに特化したHRソリューションを展開するOne Work、テック領域に特化したVCであるリアルテックホールディングス・DRONE FUNDの3社がコンソーシアムを組み、テック系スタートアップへの転職・副業支援サービスを立ち上げる。

幹事社であるOne Work社に、テック系ゆえの人材流動の特徴などの話を伺った。

大須賀 洋平氏
OneWork株式会社

2003年リクルート入社、人材系事業にて企画営業、営業企画、商品開発、新規事業(外国人領域/RPO)の開発・推進に従事。2016年、成長スタートアップをハンズオンで支援することをコンセプトにOne Work株式会社を設立。シード期からIPO前後期のスタートアップまで幅広く支援。2018年から2019年にかけてはREAPRA Venturesと業務委託契約し、同社の投資先スタートアップを複数社ハンズオン支援。

IT系と比べて、時間軸が長く、不確実性も高い”ディープテック系”

―― そもそも”テック系”のスタートアップとは何なのでしょうか。

大須賀 色々な意味で使われる言葉で、ITを使ったSaaSスタートアップなども、広義の意味では“テクノロジー”を使っているとはいえるでしょう。

一方、我々のコンソーシアムが支援しようとしているのは、大学等で研究開発された技術シーズを基に、世の中の生活スタイルを大きく変えたり、社会の大きな課題を解決したりする事業、いわゆる”研究開発系”、”ディープテック”と呼ばれる領域です。


―― ディープテックのスタートアップは、ITスタートアップと何が違うのでしょうか。

大須賀 一番違うのは社会実装の時間軸と不確実性です。

IT系のソリューションというのは、基礎技術自体は確立されていて、優秀なエンジニアがいれば数ヶ月のスピード感でアイデアを実装できますが、ディープテック系は、起業時点では本当に事業化できるかは分からず、3年~5年かけて技術を確立させていき、社会実装されれば大きなソーシャルインパクトや社会課題解決が期待できる…という性質を持ちます。


―― ディープテックのスタートアップは、どのように生まれるのでしょうか。

大須賀 大学の研究者が研究を進めるなかで研究成果の社会実装の手段として、研究室のメンバーと共に創業するようなケースや、最近では投資家側から研究室を訪問し、事業化を提案するようなケースも増えてきています。


研究畑の創業チームゆえに、大企業でのビジネス経験が役に立つ

―― ディープテック領域の人材ニーズに特徴はありますでしょうか?

大須賀 先ほど申し上げた通り、研究者の方が創業するケースが多いため、結果として創業チームにビジネス経験やファイナンスの知見が不足している事が多いです。優秀なビジネスパーソンが集まりやすいIT系スタートアップと比べて、人材採用も苦戦しがちですので、ビジネス経験が豊富な大企業人材が重宝されやすいと感じます。


―― 実際にディープテック系スタートアップで大企業人材はどのように活躍できるのでしょうか。

大須賀 ひとつの事例として大手商社から30代中盤で、20名程度のディープテック系スタートアップの経営企画ポジションに転職したAさん(仮名)のケースを紹介させていただきます。

元々商社では重厚長大系プロダクトの営業/営業企画などを担当されていらした方で、法人営業をするにあたって当たり前に使っていた販売管理フローなどを転職先のスタートアップで共有すると、想像以上に社内のメンバーに喜ばれる…みたいなケースが多々あったそうです。研究開発からはじまった20人程度のチームには、法人営業の実務を解像度高くアクションプランに落とせる人材が誰もいなかったようです。

大企業人材の「当たり前基準の高さ」がスタートアップで重宝されるシーンは多いように感じます。


―― Aさんはどういうきっかけでそのスタートアップへの転職を選んだのでしょうか。

大須賀 Aさんが属する部署では、当該業界の既存ビジネスをいかに守るか?が命題となっていました。自らが業界を変革していく側に立てないことに不安を感じていた中、社会人大学院での勉強や他業界の中間との交流を通じてその不安は危機感へと変わり、もっと仕事を通じて社会を変えていくような仕事をしたいと、転職活動を始められました。

最初はコンサルや上場間際のITスタートアップなども視野に入れていたのですが、最終的にはものづくり的なカルチャーへのフィットや、大きな社会インパクトを生めるかもしれないという期待感から、ディープテック系スタートアップへの参画を決断されました。


―― Aさん自身は、転職後の働き方についてどのように感じられているのでしょうか。

大須賀 社内に大手企業でのビジネス経験がある方が少ないため、大手企業との案件推進のシーンではメンバーから様々頼られるなど自分が役立っていると感じる機会が多く、自己効力感が高まったとのことでした。

また大企業に所属している時よりも「自分がこの仕事をやらないと進まない」とリアルに感じるシーンが多く、事業を自らが推進している手触り感や当事者意識がだいぶ高まったようです。

また、社内でキャリアを構築するための社内政治や出世競争からも解放され、自分がやりたいことにシンプルに向き合えることから、QOLが高まったとも仰っていました。

報酬面では転職により微減しているのですが、「中長期で社会インパクトを生み出すような仕事をしたい」というご自身のキャリアビジョンに合致した仕事ができていることから、「こんなにチャンスがあると知っていたら、もっと早くスタートアップに転職すればよかった」と仰っています。Aさんのようなスタートアップへのキャリアチェンジは、我々の支援のロールモデルになると思っています。


ディープテックの時間軸の長さは、大企業人材のカルチャーフィットには逆に利点

―― Aさんに限らず、大企業人材はディープ系スタートアップに親和性があるのでしょうか。

大須賀 私はそう思います。

とにかくスピードを重視するIT系スタートアップと比較して、ディープテック系はどちらかというと堅実で実直、中長期の時間軸で良いものをつくっていくモノづくり企業のカルチャーに似ている印象です。もちろん大企業よりも早い意思決定をしていく組織ではあるのですが、大企業人材が比較的カルチャーフィットしやすいという面はあると思います。


―― そんな親和性がある一方で、ディープテック系は採用に苦労していると聞きます。

大須賀 大企業人材からみると、ディープテック系のスタートアップは転職先として殆ど認識されていないのが現状です。その原因としてはやはり社会実装に時間がかかるので、実装された実績が無い状態では、何をやっている会社なのか外からみても分からないというところです。

そういった部分を、我々がリアルテックホールディングス、DRONE FUNDと連携して、その技術の可能性や魅力を分かり易く伝えていくことが必要だと思っています。

大企業とスタートアップをつなぐレア人材へ。中長期的なキャリア形成を見据える

―― ディープテック系への転職にあたって、どういった点に気を付けるべきでしょうか。

大須賀 ディープテック系ゆえのデメリットもちゃんと認識すべきだと思います。例えば私がディープテック系に紹介する場合でも、事前に「事業としては成功しない可能性も十分ありますよ」というようなトーンでお伝えしています。やはりIT系と比べて事業化の難易度が高いことは、十分に認識しておく必要があります。


―― 事業化に失敗した場合、その人材はどうなるのでしょうか。

大須賀 仮に転職先の事業がうまく立ち上がらなかったとしても、個人としては、失敗ということにならないのではないかと思っています。ハードシングスだらけのディープテック系スタートアップで事業化のために試行錯誤した経験は、仮に事業化が失敗したとしても、その方のキャリアの市場価値を十分に高めるものになり得るからです。

先ほどのAさんも、転職後、大企業のオープンイノベーション担当者から様々な相談を受ける機会が多くなったようです。大企業の実態と、スタートアップの実態、その両方を理解している人材であれば、現時点では希少価値が高いです。


―― 短期的な給与ダウンも、中長期的なキャリアアップへの投資と捉えることができるんですね。

大須賀 大手出身者がスタートアップの事業開発責任者の経験を積んでさらにキャリアアップしていくケースもあります。スタートアップCXO経験者ともなれば、多くのスタートアップから引っ張りだこの人材になります。そうなると年収面もキャリアの自由度も当然違ってくると思います。大企業から転職して活躍される方が、5年後、10年後、どんどん増えてくるといいですよね。

人生100年時代のキャリアとして、長期スパンで考えてもらいたいです。

特にディープテック系スタートアップの場合、大企業での経験が活かせる領域が多いので、比較的年齢が高くても活躍できるポジションが多いと思います。経営者も比較的年齢が高めの方も多いので、大企業に10年、20年いた方のキャリアチェンジ先として向いているのではないでしょうか。


―― テック系スタートアップへの転職支援にあたって、気をつけていることはありますか。

大須賀 先ほども申し上げましたが、事業リスクの高さ、成功確率が読みづらいなど、ネガティブなところも十分に伝えた上で、大手からスタートアップへ転職することで得られること、長期的なキャリア形成、人材の市場価値やキャリアが広がることも知って欲しいです。

デメリットと捉えられるかもしれませんが、失敗することも、その失敗経験が魅力ではあると思いますし、失敗を恐れずに色んなアクションが起こせる環境です。大企業だと埋もれがちな個人が自己効力感を持って、生き生きと働ける場所になるかもしれない。全てを知ってもらって、大企業人材のキャリアが広がるような人材流動支援ができればいいなと思っています。

本コンソーシアムでご一緒するディープテック領域に特化したVCであるリアルテックホールディングス社・DRONE FUND社には、当該領域の市場についての知識やノウハウが豊富にあります。その情報を丁寧に候補者の方に提供していくことも重要だと考えています。WEBサイトや人材紹介の面談の場を通じて、キャリアチェンジを検討する皆さんの不安を払拭していきたいですね。


―― これから踏み出そうとする人へメッセージをお願いできますか。

大須賀 待遇やポジションではなく、ご自身の能力、培ってきた経験を社会のために生かして欲しい。お金やポジションにこだわるキャリアから、社会へのインパクトを起点に考えるインパクトドリブンなキャリアへシフトしませんか?

その想いがあれば、新しいことを生み出そうとしているスタートアップで活躍できるチャンスがたくさんあります。

今はまだ、転職先として認識されていないと思いますが、よく分からないからといって、選択肢から外してしまうのはもったいない。ディープテック系スタートアップのみなさんと一緒に、インパクトドリブンの世界で働く魅力を発信していきたいと思います。


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