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【インタビュー】「スタートアップで働きたい人を増やしたい」、スタートアップ市場拡大を目指すJAFCOキャリアアカデミーの取組みとは

※本記事は、当団体が制作したWebサイトの掲載記事を再編集後、移設しており、肩書・内容は掲載当時のものとなります。

ジャフコグループは1973年創業の日本を代表する老舗VCだが、2017年よりHR支援チームを発足するなど、近年はHR支援にも注力している。
そんな中、スタートアップで活躍できる人材の育成機関として”キャリアアカデミー”を立ち上げるということで、担当者にインタビューを行った。

金沢 慎太郎氏
ジャフコグループ株式会社 ビジネスディベロップメント部

新卒で(株)ワークスアプリケーションズに入社し、働きがい事業を立ち上げる。エッグフォワード(株)では執行役員として企業の組織・人材課題に従事。ジャフコでは、投資先の組織支援に取り組みつつ、多くの人がスタートアップに流入する文化創造に向けて 邁進している。

西中 孝幸氏
ジャフコグループ株式会社 ビジネスディベロップメント部

2006年にJAFCOに新卒入社。VC投資、ファンドレイズ、M&A、投資先支援といった幅広い業務を経験。現在は投資先の採用支援に関わり、これまでにエグゼクティブクラスを 中心に多数の採用支援実績あり。

山本 惇志氏
ジャフコ グループ株式会社 ビジネスディベロップメント部

新卒で株式会社ジャフコ(現 ジャフコ グループ株式会社)に入社。九州支社に在籍し同地域スタートアップへの投資業務を経験。現在はビジネスディベロップメント部にて、投資先支援及び、大企業とスタートアップの協業支援に従事。

スタートアップをスケールさせる「仕組みづくり」や「ミドルマネジメント」を担う大企業人材へのニーズ

―― ”スタートアップで活躍できる人材”を育成するということなのですが、どういった人材がスタートアップに求められているのでしょうか。

金沢 皆さん、バイタリティがあって、アイデアマンで、プレゼンが上手くて…といった人材をイメージされるかもしれません。そういった部分ももちろん必要なのですが、私はどちらかというと「仕組みづくり」ができる人材が必要とされていると思っています。


―― 「仕組みづくり」ですか。ちょっと意外ですが…どういうことでしょうか?

金沢 事業を作って、営業して、資金調達してくる…といった対外活動をバイタリティ溢れるマインドセットで進めて行くこと自体は必要不可欠なのですが、実はそこは既に経営者自身が担っているケースが多いです。経営者が苦手とするケースが多いところ、スタートアップの組織の内部を整え、仕組み化し、経営者がやっている仕事を他の人でもできる仕事にしていくこと、そこを担える人材が求められています。

西中 経営者が営業してきた案件をフォローアップする、目標に対してKPIや会議体を設計するなど、ビジネスのあり方が分かっている人材が、会社としての形を整えていくことで、その後のスケール化の準備ができていきます。


―― 成長段階のスタートアップであるがゆえに、内部のマネジメント人材が不足するのですね。

金沢 なので、アーリー~ミドル期まで成長してくると、ミドルマネジメントが重要になってきます。経営者とメンバーの間で動く、いわゆる”1.5列目”のポジションが機能するかどうかが、スタートアップの更なる成長にとって重要です。

西中 スタートアップが成長してくると、フラットだった組織に初めて”レイヤー”ができる瞬間があるんです。このタイミングで、今まで自走力や突破力が強かったメンバーだけでなく、組織を纏める共感性が高いミドルマネジメント人材が必要になります。経営者の考えを咀嚼し、メンバーに浸透させ人を育てることができる人材です。


―― 仕組みづくりやミドルマネジメントといった役割は、どういった経験やキャリアの人材が担えるのでしょうか。

金沢 属人化させない仕組み作りや、大きい組織でのオペレーションを知っている、という意味で、大企業で一定の勤務経験がある人材の中には、適性が高い方もいるのではと考えています。

西中 特にテック系のスタートアップなどでは、経営者がエンジニア畑ということが多く、ビジネスのあり方や商習慣などの知見が乏しいケースも多いです。そんな中で、ちゃんとビジネスを継続させるという、大企業からすると当たり前のことでも、それを実行でき、着実に案件を積み上げていける人材がシード・アーリー期にいるかどうかが、スタートアップにとってキモになると思います。

金沢 また、ミドル期くらいまで成長してくると、ある程度業務も分業化されてくるので、グローバル、マーケ、アライアンス等の”専門領域”に特化した人材も必要になってきますので、大企業人材という文脈で活躍の場も拡がっていくと思います。


短期的な”転職検討”では、キャリアに対するマインドを変えていく時間と情報が足りなかった

―― そんな大企業人材が、現時点でスタートアップに向かっていないのはなぜだと考えますか。

金沢 理由は人材側・スタートアップ側双方にあると思っています。人材側は、そもそも自信がないとかリスクを考えると大企業にいた方が安定だという考え方がある。スタートアップ側も採用のハードルがかなり高く、簡単に採用の意思決定はしないということもあります。

まず前提として、大企業で成果をあげている人が必ずしもスタートアップで成果を出せるわけではありません。スタートアップでの働き方はある意味、総合格闘技に近くて、過去の成功体験は一定程度アンラーニングできるかどうかも重要になる、それができそうに無い方は採用に至りません。

西中 大企業人材が、スタートアップの課題を自分ごと化していく時間やプロセスが足りてなかったのだと思います。例えば事前に対象企業について調べようとしても開示情報が少なく、十分に理解をすることが難しいケースが多いです。また、実際の面談ではスタートアップ側も魅力を伝えることに一生懸命になり、1時間の面談では良いところだけを伝えて終わってしまいます。良いところも悪いところもニュートラルに伝えられていることが少ないのが現状です。しっかりと腹落ちしていない状態で、いきなり覚悟を求められる転職者側も納得感が持てず、ボタンの掛け違いやすれ違いが起きるケースが多いですね。

山本 実は、人材側も自分に何ができるのかを分かっていないケースも多いです。色々と声はかかるけども、実際に自分のスキルや経験がどう活かせるかが分かっておらず、自信をもって踏み切れていないように感じます。


―― どういったプロセスを踏めば“覚悟”や”自分ごと化”ができるのでしょうか。

金沢 短期的に”転職”を検討するのではなく、ある程度時間をかけて自らのキャリアに対するマインドを変えていくための情報に触れる機会を持つことだと思います。例えば大企業は、何年目でこういったこのポジションに…といったキャリアパスが明確ですが、スタートアップにはそういうものはありません。これをリスクではなくチャンスと捉えて、自らのキャリアを切り拓いていくマインドにシフトしていく必要があります。

そのためには、まずスタートアップと一緒に働く、スタートアップに転職した人と話す、といった機会が必要なのかなと思っています。そもそも自分に何ができるのか、スタートアップ側はどういう期待をもっているか…などは、実際に働いてみないと分かりません。転職をする前に、副業・兼業などで一緒に働く期間を作って、そのうえで”採らない”という判断をしたとしたら、それは人材にとってもスタートアップにとっても成功体験だと思うので、時間軸を長くするのは大事だと思います。


“スタートアップで働きたい”と思う人を増やすためのキャリアアカデミーの役割

―― 今回立ち上げる”キャリアアカデミー”の概要を教えてもらえますでしょうか。

金沢 今回キャリアアカデミーでは、スタートアップにとって必要な人材を育成することを目的として、①スタートアップで働くことへの認知拡大、②⾃⾝における適性理解、③⼊社後も含めた教育支援、を行っていきます。

まず、スタートアップで働くことへの認知拡大を目的として、キャリアイベントを実施いたします。2021年7月から月1~2回程度の頻度で開催し、スタートアップで働くことの正しい理解を促していきます。ここでは、スタートアップのリアルを伝えつつ、どういった人材がどういうスタートアップで活躍しているかといった、事例やパターンを見せていくことを考えています。

そこから、本気でスタートアップで働くことを考え始めた方とは、自身における適性理解を目的としたキャリア面談の場を提供します。面談では、実際にスタートアップに転職したモデルケース人材との面談なども有効ではと考えています。また、スタートアップのニーズも合致すれば、OJTとしての副業機会を提供することも検討しています。

金沢 実際に副業も含め、スタートアップへの本格参入をする方については、入社後の成長を支援していきます。過去にも、一兵卒として入社した方が、どんどん視座を高めていき、取締役になった…という事例は多く存在します。これを仕組み化できるよう、専門テーマ教育やコーチング、アカデミー同期生でのディスカッションの場などの提供を行っていければと思っています。


―― スタートアップエコシステムにとってアカデミーはどういう位置付けにしていきたいと思われますか。

金沢 日本のスタートアップ市場拡大に寄与していきたいと思っています。限られたパイを取り合うのではなく、市場自体を拡げるためには、まずは、母集団を増やしていくこと、”スタートアップで働きたい”と思う人を増やししてくことが、ジャフコの、そしてアカデミーの役割だと思っています。

スタートアップで働くということを、選択肢の一つに加えるきっかけにして欲しい

―― これからの活躍を期待する人材に対してメッセージをいただけますか。

金沢 実は私自身も、メガベンチャーからスタートアップに転職して視点が大きく変わった経験があります。一番の変化は、組織の看板がなくても、個人の名前で仕事ができるという自信が付いたことです。そんなシフトチェンジを、多くの人に体感してもらいたいと思いますので、何かしら自分のキャリアに危機感や関心がある方は、ぜひキャリアアカデミーのイベントに参加いただきたいと思います。

西中 大企業で働いている方で、スタートアップへのチャレンジに関して極端なイメージを持ったまま、キャリアの選択肢から外してしまっているケースを見ると、非常に勿体無いという気持ちになります。スタートアップへの転職ありきで考える必要は無いのですが、まだまだ正しい情報がちゃんと知られていないなという感覚です。メリットもデメリットも全てをニュートラルに知ってもらった状態で、スタートアップがキャリアの選択肢の一つになればいいですよね。

山本 大企業で丁寧に仕事をする、そういう細かいところができていないスタートアップは多くて、ご本人では想像できなくても、スタートアップでこんな経験が活かせるんだ…ということが時々あります。スタートアップで働くということを選択肢に加えていただくうえで、キャリアアカデミーが皆さんのキャリアを考えるきっかけになればいいなと思っています。


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