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【Interview1】メーカー企業とソフト・ハード融合スタートアップの連携の可能性

※本記事は、当団体が制作したWebサイトの掲載記事を再編集後、移設しており、肩書・内容は掲載当時のものとなります。

「ソフト・ハード融合」スタートアップと​共創パートナーの連携ケーススタディを取りまとめるにあたって、ソフトウェア・ハードウェア融合領域に関するスタートアップに豊富な支援実績・専門性を持つ有識者にインタビューを実施。
今回は、グローバル・ブレイン株式会社 ディレクター 青木 英剛氏に話を伺った。

スタートアップとの連携に慣れていない大手メーカーがオープンイノベーション創出に苦戦

―― 大企業とスタートアップとの連携は、近年どのような状況なのでしょうか?

既に連携を行っているIT・インフラ・自動車メーカー等の大企業が協業を強力に推進する一方、近年では、これまであまり連携を進めてこなかった、自動車以外の大手メーカーがスタートアップとの協業に取り組み始めています。
大手メーカーとスタートアップとの連携においては、お互いのものづくり領域が重複しないものの、連携を行うことで新たな市場に参入することができるような企業同士での連携が理想的です。もし同じ製品を作っていても、例えばLiDARの、光センサー・ソフトウェア・駆動系のようにお互いのコア技術が異なっていれば、連携することができます。
特に大手メーカーにとっては、自社市場と異なる市場のノウハウを持っているスタートアップと連携することにより、それまで参入できなかった新たな市場への参入につなげられることが大きなメリットです。
しかし大手メーカーは、スタートアップとの協業経験が不足していたり、社内での新規事業部と現場部門との連携が不足していたりするため、協業がうまくいかず、事業化までつなげることができない場合が多々存在しているのです。


大手メーカーにとっては経営層のコミットにより新規事業部と現場部門の接続性を高めることがカギ

―― それまであまりスタートアップとの連携を行ってこなかった大手メーカーにとって、連携は簡単ではないように感じます。

その通りだと思います。大手メーカーとしては、まずはスタートアップとの連携の仕方を学ぶことが重要です。近年ではスタートアップとの連携を求める企業が非常に多いため、スタートアップが連携先を選ぶ主導権を握っているのが実態です。スタートアップからの評判を落とさないためにも、丁寧かつスピーディーにコミュニケーションを取る必要があります。
また、オープンイノベーションを進めるには、新規事業部が「ピッチャー」として構築したスタートアップとのきっかけ・つながりを、現場部門が「キャッチャー」としてしっかり受け止めることが重要です。この「ピッチャー・キャッチャー問題」により、スタートアップとの連携が上手くいかないことが多いのです。大手メーカーにおいては新規事業部やCVCといった、スタートアップとの連携をミッションとした部署が設立され始めていますが、最終的にオープンイノベーションにつなげるには、うまく現場部門とスタートアップとを接続するか、新規事業部が自らコミットして事業を創出する必要があります。


―― そのようなハードルを乗り越えるために、大手メーカーは具体的にどのような活動を行っていくべきなのでしょうか。

経営層による組織設計と、現実的な目標と中期的な目線を持つことの2点が重要です。
まず、経営層がしっかりとコミットして組織設計を行う必要があります。「ピッチャー・キャッチャー問題」は、現場部門にとってスタートアップとの連携にメリットがないために生じます。そのため現場部門に対してスタートアップとの連携を明確に仕事として設定し、連携を愛でるような組織づくりを行うことが必要です。
2点目について、無理に自社単体で行おうとせず、ノウハウを持つVCなどと連携しながら、2~3年など中期的にスタートアップとの協業を目指していくことが重要となります。特に初年度は、「1社との協業創出」など現実的な目標を設定することが、成功体験を得るために重要です。まずは小さな目標をしっかり達成することで、自社内においてスタートアップとの連携に向けた機運を醸成することができるのです。


ものづくりスタートアップにとっては大手メーカー出身の優秀な中堅社員の在籍がカギ

―― ものづくりスタートアップにとっても、大手メーカーと連携を行う際に気を付けるべき点があるのでしょうか。

これまで主流であったIT・インフラ企業との連携と異なり、双方がものづくりを行っているメーカーであるため、スタートアップとしては知的財産の帰属など、知財の取り扱いにこれまで以上に注意し、契約の締結などを慎重に進めていく必要があります。
一方で、スピードが遅くなりすぎないように、スタートアップの意思決定のスピード感にいかに大手メーカーを巻き込めるかが重要です。このような巻き込みのためには、スタートアップの中に研究者だけではなく、大企業の意思決定構造を把握している大手メーカー出身の中堅社員(自ら事業化に携わる現役世代)がいることがポイントとなります。
中堅社員は大手メーカーの中での経験と、能力・実行力が両立されているため、仮に出向といった形だとしてもそのような人物がスタートアップにいることで、社会実装の成功率が高まるのです。


―― 大手メーカーの出身者は、量産など社会実装を行う際に在籍していれば良いのでしょうか。

社会実装以前から在籍していることが理想的です。さらに、大手メーカーの出身の中堅社員に加え、研究者・ビジネス経験の豊富な人材の3者が揃っていることが望ましいと言えます(研究者の必要性はその企業の事業形態にもよります)。
大手メーカー出身者が不在のまま製品設計を行った場合、量産段階において大企業からの指摘により、製品仕様を変更せざるを得なくなる場合があります。また、ビジネス経験の豊富な量産契約を獲得できる営業担当が存在しない場合、優れた技術・製品を持っていても、量産契約を獲得できず実証実験フェーズに留まってしまうケースがあり、そのような状況を打破するために大企業との交渉に長けた営業担当も重要なのです。


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