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【転職者インタビュー】化学メーカーから素材・材料系スタートアップへ|わたしがスタートアップを選んだ理由 #4

※本記事は、当団体が制作したWebサイトの掲載記事を再編集後、移設しており、肩書・内容は掲載当時のものとなります。

スタートアップキャリア総研では、大企業人材が経験を活かしてスタートアップで活躍するネクストキャリアを考えるきっかけを提供しています。

”化学メーカー”出身者にフォーカスを当てた本回は、現在、素材・材料系スタートアップで働くD氏にお話を伺いました。

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研究一筋のキャリアからMBAをきっかけにビジネスの世界へ

―― 早速ですがDさんのキャリアについて教えてください。

D氏 もともと研究が好きで大学、大学院と化学系の研究を続け、2016年に大手の化学メーカーに就職しました。研究職として入社後、ディスプレイ材料の材料開発に従事するなかで同じく研究職の上司が仕事をしながらビジネススクールに通っていることを知ったんです。そこからMBAに興味が沸き、自分もビジネススクールへ入学しビジネスの基礎的な知識を学びました。その同時期に、勤務先の元同僚を通じて現在勤めている素材・材料系スタートアップの存在を知りました。興味が湧き自分からアプローチした結果、そのスタートアップに転職することとなり、現在は事業開発業務としてマーケティング、営業、営業計画策定などに従事しています。


―― 現在はビジネス開発に従事しているとのことですが、研究職の頃からビジネス開発に興味があったのでしょうか。

D氏 いえ、そんなことはないんです。正直なところ化学メーカー入社当時は、社会人の仕事に興味が持てず、大学院の研究室にいた流れで志した研究職を定年までやっていくものだと思っていました。ですが、研究職として仕事をするなかで、研究は好きだけれど専門性を尖らせていくイメージが持てなくなったんです。特に企業で研究をする個別の製品に思い入れが持てず、幅広い人に役立つ、縁の下の力持ち的な役割を果たすことができる仕事に取組みたいと思うようになり、だんだんと研究よりもビジネスに関わりたいと考えるようになりました。


―― ビジネススクールではどのようなことを学びましたか。キャリアに対する考え方に変化はあったのでしょうか。

D氏 人材マネジメント・マーケティング・ファイナンスなど一般的によく言われる”ヒト・モノ・カネ”などについて、フレームワークも活用し一通りのビジネスの基本知識を学びましたが、それよりも、モチベーション高くビジネスに取り組んでいる同級生が周りにいたことに知識以上の刺激を受けました。

ビジネススクール入学を決めたのは、研究畑でキャリアを積んでビジネススクールに行く人は少ないので”逆張り”をしようと思ったからなんです。周りにそのような人材がいないからこそ、組み合わせる価値が大きいのではと考えました。当初は転職のことはあまり考えておらず、まさか自分が卒業前に転職するとは想像していませんでした。

私が通ったビジネススクールでは、「人生で何を成し遂げたいのか」「自分は何をやりたいのか」といったことを考える機会が提供されており、私は引き続き製造業に関わっていきたいという思いが強いことに気づきました。自らの人生・キャリアについて徐々に考える癖やビジネス知識も身に着けていくうちに、このまま化学メーカーで働き続けるべきかどうかを考えるようになりました。というのも、技術系の経営企画室に行きたいという思いがあったのですが、その部署は20代は皆無でベテランばかり、いつくるかわからない異動のタイミングを待っていてもしょうがないという感覚を持っていました。勤務先で研究以外のことをバリバリできるのは数年後になるのであれば、他の道を考えてもよいのでないかと考えるようになりました。


人との出会いによる自らのキャリアに対する深耕がスタートアップ転職の転機に

―― スタートアップへの転職の動機はどのようなものだったのでしょうか。転職に関して懸念していたことはありましたか。

D氏 現在勤めている素材・材料系スタートアップのことを知ったのは、元同僚の知り合いからの紹介なんです。自分が取り組んでいた研究テーマと近い領域の製造業向けソリューションを提供しているスタートアップで、かつ立ち上げ期のステータスだったのですが、こういうスタートアップにはそう簡単には巡り合えないと思ってコンタクトを取り面談や社長と話す機会を経て転職を決意しました。

転職を決断できたのは、研究開発に戻ろうと思えば新卒から勤めていた化学メーカーなり、別のメーカーなり、きっと誰か雇ってくれるだろうという自信があったことが大きいです。現職で取り組んでいるAIデータ活用は、大手の化学メーカーも近年注目している分野のため、万が一の時はスタートアップで取り組んだ実績が一定の評価を得られるだろうと思っていました。

ただ、ビジネススクールに通ってビジネス思考のトレーニングは積んできたので、ビジネスの会話にもついていける自信がありましたが、スタートアップならではの0→1の経験はありませんでしたので、その点についてはキャッチアップする必要があると思っていました。


―― スタートアップでの苦労や、大企業との働き方の違いは感じていますか。

D氏 化学メーカーでは研究の仕事のみで顧客と話す経験がなかったため、名刺の渡し方のマナーもきちんと把握できておらず、入社当初は苦労した記憶があります。社長の外出に同行してメモを取りつつ内容を覚えながら学んでいきました。最低限の仕事に慣れてきたという感覚を持ったのは、入社して半年くらい経ってからです。ただ、半年も経つと新しい仕事が出てくるので、慣れる間もなく次に進むという感じでした。大企業とは明らかに違う、スタートアップの仕事のスピード感に日々驚いていました。

働き方は、全てにおいてギャップがあると言っても過言ではありません。会社の規模が小さく意思決定が全て自分の目の前で行われていることや、経営陣との距離の近さが思った以上に近いことに驚きました。意思決定がされれば即行動に移すというパワフルさも大企業にはないものです。

一方で、大企業と比べて何もない側面もあります。例えば、ドキュメンテーションが整備されていないので引継ぎがきちんとされないことも多いですし、人事・労務の仕組みや確立された業務プロセスもありません。マインドセットの変換という点で、受け身ではなく、ないのであれば自分で作るというマインドが必要ということを日々痛感しており、私自身も受け身思考が完全には抜け切れている状態ではないので苦労しています。

スタートアップは初体験の連続、変化を楽しめることがスタートアップキャリアの魅力

―― 大企業からスタートアップで働くというキャリアチェンジを経て、今後はどのようなキャリアを目指していきたいとお考えですか。

D氏 立ち上げ期のスタートアップに参画して会社の顔として動き回るCEOの活躍を間近で見ていますが、CEOは大変な役回りだなと。本当に周りにいるスタートアップの経営者は優秀な方が多くて敵わないと思っているので、いまのところ自ら起業することは考えていません。まずは今のスタートアップで昇進していきたいですし、将来はこれまでの経験を活かし、大手の事業会社で自社の事業を自分の手で大きく推進させたいと考えています。


―― 最後に、スタートアップ転職を志す大企業人材、特にDさんのような研究職の方にメッセージをお願いします。

D氏 日々目まぐるしく変化していきますので、仕事へのやりがいを見いだせないとしんどさを感じてしまうと思うかもしれません。また、勤務先のスタートアップでは採用活動を行っていますが、採用担当目線で化学メーカーの人材を見るとスタートアップで活躍できそうな人はごく一部で、安定志向の強い研究者の人の多くはスタートアップでの働き方は向いていないという印象を持っています。

ただ、近年はスタートアップへの出資額も増え、労働環境や給与水準も以前より改善してきているという感覚を持っています。そのあたりはそこまで心配しなくてもいいですし、中長期的な目線でみるとマイナスな経験にはならないのではないでしょうか。

周りからスタートアップへの転職を止められてもキャリアチェンジを自身で決心できるような人は向いていると思いますので、変化を楽しめる人や自ら前向きに行動できる人は、ぜひスタートアップでのキャリアにチャレンジしてほしいと思います。


大企業在籍中のMBA取得経験やビジネススクールでの出会いによる刺激が、深くキャリアを考えるきっかけとなり、新卒当初は想定もしていなかったスタートアップへキャリアを転身をされた姿が印象的でした。

給与面や労働環境面での違いだけでなく、スタートアップの仕事の進め方や持つべきマインドセットは大企業のそれとは異なることを認識、覚悟したうえで転職活動を進めていくのがよいのかもしれません。

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