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【Interview3】スタートアップを呼び込む地域課題発信の秘訣

※本記事は、当団体が制作したWebサイトの掲載記事を再編集後、移設しており、肩書・内容は掲載当時のものとなります。

「ソフト・ハード融合」スタートアップと​共創パートナーの連携ケーススタディを取りまとめるにあたって、ソフトウェア・ハードウェア融合領域に関するスタートアップに豊富な支援実績・専門性を持つ有識者にインタビューを実施。
今回は、情報科学芸術大学院大学 メディア表現研究科 教授 小林 茂氏に話を伺った。

繋がり方、関係維持の仕方の解像度を高めることが連携のカギ

―― スタートアップ連携を通じた地域課題解決を促すために、どのようなことが求められるでしょうか。

スタートアップが自分たちのプロダクト(製品・サービス)を社会実装に結び付けるためには、様々なプレイヤーとの連携が求められます。特に、地域課題の解決を志向する場合には、現場の実証環境を提供する地域の事業者や自治体との連携は欠かせないものです。
一方で、実態としては、スタートアップは地域の事業者や自治体と繋がり、関係を維持するための方法論が分からず、自治体側も地域課題は明確になっているものの、その解決手段を持つ民間企業探しに苦労しています。
スタートアップのソリューションで地域課題解決ができるエコシステムを作るためには、事業に必要なパートナーが整理されているだけでなく、 ①どのように繋がるのか、②どのように関係性を維持するのか、について解像度を高めることが求められます。


―― ①繋がる、②関係性を維持する、のそれぞれの視点についてどのような難しさがあるでしょうか。

①どのように繋がるのか、という観点では、都市圏に本社を置くことが多いスタートアップが、課題を持つ地方の自治体とどのように出会い、信頼関係を築いていくかに課題があります。昨今では大学が地域のハブになるケースも多いですが、活動の主眼が基礎研究的なものとなりがちなので、実際に地域課題を解決しようとするスタートアップ企業と地域の事業者・自治体とのマッチングにおいて大学の関与を期待することはなかなか難しいでしょう。
②どのように関係性を維持するのか、という観点では、自治体とスタートアップの組織文化や活動スタイルの違いを如何に乗り越えるかが課題です。スタートアップの論理的な問題解決ステップをスピーディに試行錯誤していくスタイルは、現地現物を第一に考え段階的に業務を進める中で信頼関係を構築する地域の事業者や自治体のスタイルとは大きく異なります。
こうした難しさを乗り越えるためには、スタートアップと地域の事業者・自治体の双方が意識的に歩み寄ることが必要です。


自治体主導で地域課題を発信することがパートナー探しの近道

―― 地域課題解決に資するスタートアップを見つけるためには、どのような方法が求められるでしょうか。

地域課題解決に資するソリューションを持つスタートアップを見つけるためには、地域の自治体主導で課題を提示することが重要です。
例えば、北海道は「Local Innovation Challenge HOKKAIDO」という地域課題の解決を目指すオープンイノベーションプロジェクトを行っており、さっぽろ連携中枢都市圏内12市町村が抱える課題をWebサイト上で提示し、課題解決に資するソリューションを持つスタートアップを募集しています。
多くのスタートアップは価値あるプロダクト(製品・サービス)を作っているものの、実証環境や販売先となるパートナー探しに苦心しており、自治体側が分かりやすいインターフェイスを用意して課題を提示することでマッチングが実現しやすくなります。


―― 自治体側から課題発信するにあたり、気を付けるべきポイントはあるでしょうか。

解決したい課題は明確に提示しながら、その解決手法は民間の裁量に任せることがポイントです。そうすることにより、自治体側が想定していないような解決策を持つ民間企業が関わることができ、マッチングの可能性が広がります。
また、新たなソリューションを持つスタートアップは必ずしも量産に至っているわけではありません。仕様を明確化しないことで、価値あるソリューションを持ち、その検証の機会を探るスタートアップが実証という形で応募することができるようになります。
一方で、仕様を詳細に決めたうえで公募すると、受託開発のような位置づけになります。受託なのに低額だと、スタートアップ側にとっての魅力が薄れてしまい、関わりにくくなります。こうなると、結果として、地域の課題解決が実現できなくなってしまいます。


-徹底的に相手の懐に入り込むことがスタートアップが信頼を獲得する秘訣

―― では、自治体とスタートアップが繋がった後、関係性を維持するためには何がポイントとなるでしょうか。

その段階では、スタートアップ側からの歩み寄りが求められます。
テック系スタートアップでは、工学や医学由来のロジカルな問題解決の文化が染みついていることがありますが、地域の現場で起きている課題は非常に複雑で論理的に定義が難しく、現場を深く理解しなければ真の問題解決にはつながりません。
こうした違いを理解するためには、実際に地域や事業者の懐に入り込み、フレームワークやモデルが現場に当てはまらないという痛い経験をする中で、現場の課題感を肌で感じることが重要です。
ガイドラインで紹介されているEco-Porkの事例は、養豚企業で丁稚奉公的(:下働きとして勤めること)に1~2か月間働く中で、現場で何が大切なのかを理解された非常に参考になる事例だと思います。


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