低コストな6U衛星で、広がるミッションと衛星活用の可能性(Vol.3)
2019年に始まった経済産業省の軌道上実証事業において、初めて軌道上実証を行っているKITSUNE衛星。
プロジェクトの幹事者として中心的役割を発揮した原田精機株式会社の原田浩利社長、技師の仲山和宏さんに話を伺った。
今回は、ビジネス視点での人工衛星における今後の見通しと、衛星活用の可能性について伺った。
人工衛星プラットフォームに適した、ミッション対応力があり短納期な6U
インタビュアー)
現在の人工衛星のビジネス状況をどのようにご覧になっていますか。
原田氏)
宇宙事業を国としても民間事業促進を打ち出しているが、世界から見れば日本の取組はまだ途上だと思います。
だからどんどん実証機を打ち上げるしかない。当社としてもどんどん次を打ち上げていきたい。海外には国の支援を受けて3Uをどんどん打ち上げている企業の例もあります。
3Uがそういう競争環境であればもっといろんなミッションの可能性がある6Uも進めていけばいいと思います。
開発という意味では人工衛星のアジャイル開発実証の必要性などが言われていますが、原田精機は低コストかつ短納期で実証実験まで行うことができた。
Cバンドの実証ができているアドニクス、KITSUNE衛星を一緒にやっている九州工業大学もそうです。今は運用試験を行って、マニュアルも作っています。
そういった意味で原田精機が作る衛星が今トップだという思いで、これを次につなげていきたいですね。
そして、衛星プロジェクトで一番の大きな市場は、あとからアプリを作るところなんですよ。
この部分を促進しなければなりません。例えば、付録付きの雑誌がありますよね。付録が欲しくて買う方が多いと思うんですよ。
ですから、人工衛星打ち上げて望遠鏡で地球見てそのデータがどうなるというシステムを理解している人ではなく、人工衛星でこんなことできないのってリクエストする人を増やすことが大事なんです。
そんなニーズがあるならこんな衛星画像データが取得できるからアプリ作りましょう、または画像データを使って加工することできますか、などもっと高度なことを国民が言い出すようになる。
国民の要求があれば、自然に人も投資も集まってきます。スマートフォンでもそうですね。アプリが増えて、結果としてスマートフォンをどんどん作ってほしいという投資が生まれる。
人工衛星においてもそういうプラットフォームをつくるには、開発期間が短くて、いろいろできる6Uがいいんです。
エンターテインメントで、さらに広がる衛星活用の可能性
インタビュアー)
「付録」が大事なんですね。
原田氏)
衛星は携帯電話のような通信機器のインフラです。
それを使って何をするかが大事。それが文化になるんです。そういった意味で、私は人工衛星を使ったエンターテインメントが良い、エンターテインメントっていうのは無くならないってずっと提言しているんです。
なぜそう言っているかというと、提供ってずっとありますよね。スポーツやテレビもそうです。スポンサーなしではやっていけません。
人工衛星打ち上げにはお金がないとできないということであれば、そもそもそういうエンターテインメントだと思うんですね。
だから人工衛星を広告プラットフォームとして企業宣伝に使えると考えています。
本格観測衛星は400億円、はやぶさ2の総事業費は289億円と言われています。
それが我々の衛星なら2億円でできる。性能の差は歴然ですが、値段の差も歴然です。それなら広告に使ってみようというところが現れるかもしれない。
1社で難しくても、10社で一緒にやれば1社あたり2000万円です。しかも、衛星を作るところから参加できる。そういったことも含めてリクルーティングに活用できると思います。
インタビュアー)
低コストで作れる人工衛星をエンターテインメントという分野に当てはめると、衛星活用の可能性が広がりますね。
原田氏)
今回HSK-SATというホームページを立ち上げました。
「Hello! Earth! 宇宙からこんにちは!」として天気予報や通信など人工衛星がどうやって普段の生活に入っているかを紹介しています。
誰にとってもわかりやすいように、専門用語も使っていません。
人工衛星で何ができるのか、またはどんな使い方をするのかなど、人工衛星に関して分からないことはここで解決できるということを目指しています。
そうやって、このサイトを人が集まれる、いわばアリーナのような場所にしていきたいです。そうして人工衛星を使いたいという人を増やしていきたいですね。
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