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『出向起業』で、外部資金を調達して事業拡大を目指すFemtechベンチャー|事例#2 株式会社TRULY 二宮 未摩子氏

※本記事は、当団体が制作したWebサイトの掲載記事を再編集後、移設しており、肩書・内容は掲載当時のものとなります。

“出向起業”により事業を進めてきたTRULY。前回インタビューから約1年間が経ち、株式会社サイバーエージェント・キャピタル、株式会社MTG Ventures、三菱UFJキャピタル株式会社の3社のベンチャーキャピタルからの資金調達に至った経緯を、出向起業スキームの先進事例として、CEO 二宮 未摩子氏に伺った。

まだ顕在化していないニーズを開拓する過程で、サービス内容を徐々にピボットし、地道に実績を積み上げてきた

―― 出向起業後、事業開発の進捗はいかがですか。

TRULYは、すべてのオトナ女性が経験するにもかかわらず、タブー視され、語られることが少ない更年期などの女性ホルモンの悩みをサポートするフェムテックカンパニーとして、女医とのオンライン相談サービスなどを展開しています。経済産業省の出向起業制度を使って創業した当初は、いわゆるtoC事業とtoB事業と並行して検討していたのですが、補助金を活用してプロトタイピングや実証を進める中で、比較的ニーズが見え始めていたtoB事業の優先度を上げ、サービスの実装と法人営業を進めてきました。

私が登壇したピッチで知り合った方や、VC含め人から紹介していただいた先などを中心に営業し、今年4月以降でコンタクトを取っているのは月50社ぐらいです。そのうち、新規獲得に至ったのは7〜8社でしょうか。企業としても問題は認識してはいるものの、まだ明確な課題としては顕在化していないため、検討する手前の段階で止まってしまうところが多く、その壁をどう超えていくかが今の課題です。

これまでご一緒した企業は13、14社、コンテンツやセミナー開催などの単発のご依頼から、チャット相談とセットで導入など、企業ごとにカスタマイズしながら提供先を増やしています。直近では、経済産業省の「フェムテック等サポートサービス実証事業費補助金」にも採択され、その後押しもあり、渋谷区や神戸市、富山県など自治体との連携なども始まっています。


―― 事業内容は創業時から変化していますか。

基本的な思想や目的は変わりませんが、サービスのスコープは、法人営業を進めるなかで聞いた多くの顧客の声を活かして徐々に変わりつつあります。

例えば、今あるフェムテックは女性に特化したサービス・課題になっていて、どうしてもビジネスというよりは啓蒙活動になりがちです。一方、「更年期」は、男性にもあてはまる、同じ課題を抱えるテーマになります。企業の本質的な課題を解決するうえで、男性という要素を無視することはできません。男性も含めた”働き方改革”の文脈で使ってもらう意味でも、男女がお互いに性の課題に取り組む、理解し合っていくサービスにしていければと思っています。

面談した投資家は約40社。見られるのは、辞める辞めないではなく、本気でコミットする気があるかどうか

―― 資金調達に向けて、どのような活動をされたのでしょうか。

昨冬頃から、資金調達活動を本格的に始めて、投資家・VCと合わせて40社ぐらいと面談しました。デューデリジェンスを受けているVCからは特にトラクションの部分を注視され、地道に積み上げていたtoBの実績や直近のフェムテックのムーブメントに対する可能性を説明できたことで、より具体的に理解していただけたと感じています。

結果として、継続的に良いコミュニケーションを取らせていただいていた、VC3社に出資いただくこととなりましたが、各社の女性向けのプロダクトとのシナジーなども含めて評価いただいたのかと思います。とはいえ、これが決定するまでは本当に大変で、生きた心地がしなかったですね。


―― ”出向起業”という状態について、投資家からの反応はいかがでしたか。

企業に籍を置く社員に対して出資をしてくれることは、なかなか難しいことだと思いますので、現状の企業に籍を置くことでのメリットを鑑みて理解していただき、TRULYの成功を常に応援してくれていることは大変ありがたく感じています。ただ、後々は独立して活動することを期待されていると思います。

これまでも様々な投資家の方と面談してきて、「“出向起業”では覚悟が足りない」と明確におっしゃる方も一部いらっしゃいましたが、大半は会社に所属しているかどうかは重要視しておらず、本人の思いがどこまであるか、本気でコミットする気があるかどうかを見ている印象です。今後、出向起業制度によって起業するスタートアップが増えてくることで、よりポジティブに受け止めてもらえるようになるのではないでしょうか。


―― 出資を受けて、元社との関係性に変化はありましたか。

今もTRULYにフルコミットできる環境を用意いただいています。元社としても、本業で提供しているコンサルティングサービスの中にTRULYを活用していくなど、協業の実現に向けて、事業開発に注力できればと思います。


起業することによる人との出会い、やらざるを得ない状況が、自らの価値観を変えていく

―― 資金調達を経て、今後はどのような事業展開を予定していますか。

投資家も含めてtoB事業の拡大を期待している声が多く、まずはそこに向けて法人営業を引き続き進めていきます。一方、この1年でフェムテックの法人向けサービスの競合はかなり増えてきており、toB事業だけで優位性を確立するのは難しいと思っています。

TRULYのtoBサービスを通じて従業員の方々への認知は広がりつつあると感じているので、toBで培ったマーケティングリソースを活用しながらtoBtoE、toBtoCのサービスに誘引していけるよう、11月頃からチャット相談サービスを拡大していく予定です。

また、事業拡大に並行して採用も進めています。TRULYではフルコミットメンバーも加わり、医師や薬剤師・看護師のメディカルチームも増員しているところです。今、内製化を進めており、特にバックオフィス部門メンバーの社員採用を検討しています。スピード感が大事だと日々感じていますので、人も増やしつつスピードを上げていきたいと思っています。


―― 出向起業での活動を振り返って、改めていかがでしたか。

出向後の立場にもよると思いますが、ファウンダーとして経営責任を持った立場で外に出たことで、私自身のキャリアを通じてこの1年間が最も変化したといえます。特に人との出会い、今までは出会えなかったようなビジョンや思いを持ち、それを事業として成立させている凄い人たちと出会えたのは、社内プロジェクトでは経験できなかったことだと思います。

ベンチャー企業のコンサルを担当したことがありましたが、ベンチャーが資金調達で大変な時期でミーティングのセッティングすらできない状況を当時は理解できませんでしたが、今は分かります。自分が外に出て経験したことで、見えていなかったものが見えるように、価値観が変わりました。特にこのファイナンスの知識不足は痛感しました。

正直、こんなに大変だと知っていればやろうと思わなかったかもしれません(笑)。ただ、やらざるを得なかった、諦めることができなかった。やらざるを得ない環境が人を変えるんだと身を持って知ることができました。外に出て良かったと、改めて思います。


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