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出戻り経験者103人に聞いた「出戻り成功の秘訣」と「出戻り前の不安を解消する鍵」

終身雇用・年功序列といった伝統的な雇用形態が崩れ、人材の流動性が高まっているなか、晴れて新卒で大企業に就職したのち、キャリアアップ・スキルアップのためスタートアップを含む別の企業への転職や起業をする気運が高まっている。

一方で転職を重ねる人々のうち、ファーストキャリアとして選んだ大企業に戻る、いわゆる「出戻り人材」も存在する。

一度大企業を出た人材らは、なぜ再度同じ企業に就職しようと思ったのか。出戻りを経験した103人の実態を見ると、転職前に気にしていた不安やリスクは杞憂であることも多い実態が明らかとなった。

■この記事のサマリー

  • 出戻り人材が出戻り前に最も不安視していたのは「職場での人間関係」であったが、そのうち85%は出戻り後には人間関係の不安を解消している。

  • 前職の接点として最も多かったと出戻り人材が挙げたのは「元同僚との繋がり(飲み会などの個人的な交流)」であり、75%は個人的な交流が最も出戻る際のきっかけになったと回答している。

  • 企業が出戻り時人材を確保していくためには、一度退職した人材に対して、出戻る際の不安が杞憂であるというメッセージの発信とともに、定常的にコミュニケーションを取り、心理的安全性の担保をしていくことが必要。

出戻り人材が出戻り前に抱く「人間関係」の不安はただの杞憂?

新卒で入社した会社に定年まで勤めるという価値観は企業側も人材側も薄れ、誰もが転職によってキャリアアップや多様な働き方に合わせてキャリアを変化させることができるようになった時代。

その一方で、企業を退職した人に対して「裏切り者」の烙印を押してしまう社風を持つ企業も依然として存在する。

勤めていた企業を一度退職し、別のキャリアを進んだのちに、勇敢にも元いた企業への再就職を決めた出戻り人材は、再就職前と後にどのような不安を持っていたのか。そしてそれらの不安は解消されたのだろうか。

出戻りを経験した103人に聞いたところ、出戻り前の心配事や気になる点として約半数が挙げたのは「元同僚から歓迎されないのではないか、人間関係に苦労するのではないか」であった。

出戻り後の状況を聞くと、全体のうち85%の出戻り人材は人間関係での苦労は解消されたと回答しており、再就職前にいただいていた懸念が杞憂であることがわかる。

※出戻りにあたり、特に心配だった/気になっていた点(上位5項目)

周囲から歓迎されないことに対する不安と、出戻り後の状況についてのコメントとしては、下記のようなものがある。

「離職時に少なからず迷惑をかけたため、人間関係の面で不安はあったが、皆あたたかく迎え入れてくれた。必要な時には適切にサポートをしてもらっている。」(食料品製造(大企業)→金融(大企業)→食料品製造(大企業))

「同僚からの反応を心配していたが問題なかった。内心はよく思わない同僚もいたと想定しているが、出戻り前の企業で学んだことを還元したことで感謝もされた。」(製造(大企業)→コンサル(大企業)→製造(大企業))

出戻り人材は、退職時に同僚に少なからず迷惑をかけてしまったのではと後ろめたく感じている一方で、別の職場で得たスキルや経験を活かして活躍する姿を周囲に見せることで、周囲との関係をうまく構築している姿がうかがえる。

昇進、給与アップ、キャリアの行き詰まりの懸念は、再就職後の解消が難しい場合も

調査結果では、出戻りにあたり心配だった点の上位の項目として、今後のキャリアへの行き詰まりや適切な評価にもとづく出世、仕事内容や役職に見合った給料等も挙がっているが、人間関係や組織内での活躍と比較すると出戻り後の解消率は高くない。

※戻りにあたり、特に心配だった/気になっていた点が出戻り後に解消されたか 「解消された」=大きく解消された、やや解消された の合計  「解消されていない」=全く解消されてない、あまり解消されていない の合計

これらの理由として挙げられたコメントでは、下記のようなものがある。

「転職先のスタートアップでは部長職、出戻り先の企業ではもともと管理系の事務職であったため、復職後にすぐマネージャーに戻ろうと意気込んでいた。ただ、親しかった社長以下役員と復職後に距離感が生まれてしまったこと、関係が深い直属上司が別会社に出向してしまったこと、マネージャーのポストに空きが出にくい等の状況が重なり、思ったようなキャリアにはなっていない。」(電気(大企業)→電気機械器具製造(大企業)→電気(大企業))

「人事体系上、以前にいたランクよりも一つ下で出戻りした。役職や責任範囲は順調に広がり、出戻り前程度の役割責任を任せられている一方で、人事体系のルールの溝にはまり事実上ほぼ昇給していない。」(人材(大企業)→小売(スタートアップ)→人材(大企業))

出戻り人材の受け入れが進んでいない企業では、給与体系や昇進制度など人事的な仕組みが制約となり、出戻り人材の懸念が払しょくされていない状況も依然として存在するようである。

出戻り人材8割強の再就職のきっかけは元同僚との繋がり

様々な不安を抱えながら次のキャリアや転職活動を行う人達は、大企業への再就職を決めるにあたり、出戻り先とどのような接点を持っていたのか。

出戻りするまでの期間に、出戻りした企業との接点を聞いたところ、8割以上の出戻り人材は、元同僚との繋がり(飲み会などの個人的な交流)があったと回答している。退職者コミュニティのアルムナイ組織*や企業提携を通じた企業との接点を持っていた人も一部いるが、個人的な交流には及ばない。

そして、出戻りに最もつながったと考えられる接点として多かったのも元同僚との繋がりであり、全体の75%を占めた。

※出戻りするまでの期間にあった接点のうち最も出戻りに繋がったもの

出戻りのきっかけとして挙げられた意見として、下記のようなものがある。

「辞めてからも在籍した企業の人と良好な関係を築けていたことが全てだったと思う。」(小売(大企業)→卸売(スタートアップ)→小売(大企業))

「上司からの熱烈なラブコールが一番の要因だった。」(製造(大企業)→情報通信(大企業)→製造(大企業))

「元同僚との飲みの席で転職先の退職予定を話したところ、その話が元上司に伝わり、元上司から復職の打診の連絡をもらった。」(娯楽(大企業)→娯楽(スタートアップ)→娯楽(大企業))

退職した人材を裏切者扱いせずキャリアチェンジを肯定的に捉えてくれた同僚との継続的な付き合いは、出戻る動機として大きいと考えられる。

アルムナイ組織:アルムナイとは英語で「学校の卒業生・同窓生」を意味することから、派生して企業の離職者やOB・OGという意味で使用される。アルムナイ組織とは、そうしたアルムナイを組織し、元社員と定期的にコンタクトを持ち、自社の現状等の情報共有や、アルムナイを集めた懇親会等を開催する組織を指す。

出戻り人材が出戻りを決めたきっかけとなった情報(同僚の声掛け以外)

数は多くはないが、出戻りの要因になった情報として興味のある募集を自ら発見したり、会社に対する不満が解消されたことを知って出戻ることを決意した人もいる。

「IR情報など将来的な事業構想から、自分が活躍できるポジションがオープンで募集されることがわかった。」(医療(大企業)→通信(スタートアップ)→医療(大企業))

「出戻る企業の業務拡大方針と、自身の経験、知識が合致していることを知った」(不動産(大企業)→不動産(大企業)→不動産(大企業))

「M&Aと合併によって大きく組織が変わり、職場環境が改善されるという情報が決め手となった。」(化学(大企業)→化学(大企業)→化学(大企業))

元いた企業に復職したいのであれば、元同僚との繋がりがなくても、企業の情報収集を自ら意欲的に行い、出戻りの内発的動機づけをする取り組みが必要になるだろう。

出戻り人材の意見をみると、出戻り先の企業や元同僚と退職後も友好的な関係を続けていることが、出戻りをする際のきっかけないしは出戻り後に人間関係構築に悩まず組織の中での活躍に影響することが明らかとなった。

次のキャリアとして元いた企業への復職を考えている人は、まずは出戻りのキャリアに関する心配事を周囲の人に相談してみたり、元の職場の同僚らと久しぶりに近況報告をして情報収集してみてはどうか。

一方で、個人的な交流でしか退職者を繋ぎとめることができていない企業の状況を踏まえると、企業側は組織立った退職者同士のネットワーク構築をしたり、人脈以外での出戻りの機会を増やしたり、復職後の出戻り人材を給与や昇進の面で評価をするための制度を再設計することで、出戻り人材をより一層受け入れていく姿勢を示すことが必要だろう。

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終身雇用や年功序列など、これまでの雇用形態は崩れ、最近では人々の働き方も大きく変わっています。

新卒で大企業に就職したのち、将来のためにスタートアップなど別の企業への転職や起業する傾向が強まる一方で、過去に大企業を離れて転職を重ねた人の中には、再びファーストキャリアとして選んだ大企業へと戻る、いわゆる「出戻り人材」の活用が注目されています。

本記事に記載した内容を含め、実際に出戻りを経験した103人に行った調査の結果が公開されました。出戻り人材の活用に興味がある企業から個人まで幅広い方にご参考いただけますと幸いです。

■大企業への出戻り人材に関する調査報告書
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また、本調査レポートの解説記事は本記事のほかに、下記のハッシュタグからご覧頂けます。興味をもって下さった方はぜひ他の記事もご一読いただけますと幸いです!


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