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【転職者インタビュー】総合商社から米ユニコーンスタートアップへ|わたしがスタートアップを選んだ理由 #2

※本記事は、当団体が制作したWebサイトの掲載記事を再編集後、移設しており、肩書・内容は掲載当時のものとなります。

スタートアップキャリア総研では、大企業人材が経験を活かしてスタートアップで活躍するネクストキャリアを考えるきっかけを提供しています。

”総合商社”出身者にフォーカスを当てた本回は、現在、米ユニコーンスタートアップで働くB氏にお話を伺いました。

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米国駐在時代に尊敬する経営者と出会い、真のグローバル人材に憧れを持つ

―― 早速ですがBさんのキャリアについて教えてください。

B氏 2007年に新卒で大手総合商社に入社しました。主に鉱山ビジネスに従事しており、6年目には米国駐在を経験しました。米国駐在中に出会った鉱山会社のプロ経営者の方々が世界を舞台に強いリーダーシップをもって組織を率いている姿に憧れを持つようになりました。駐在を終え本社に戻りましたが、一個人として多国籍な人達の組織に放り込まれる経験や留学経験を積みたい気持ちを捨てられず、英国に私費でMBA留学することを決め、商社を退職しました。MBA留学中に参画していたコンサルティングプロジェクトでは、自分でコンタクトを取って日系のハードウェアスタートアップ支援を行ったのですが、卒業後の2017年夏からそのままその会社に転職することを決意しました。

ハードウェアスタートアップに対し、MBAプログラムでは欧州の市場調査・提案をしていたのですが、転職後も欧州市場の営業マーケティングに従事、現地法人設立後は社長に就任しました。その後、2021年からシリーズAのテック系スタートアップへ転職し事業開発に従事しましたが、今年、2022年からは新たにシリーズBの米国テック系スタートアップの日本法人立ち上げに従事する予定です。


―― スタートアップへの転職は、当初から想定されていたのでしょうか。

B氏 商社に入ったばかりのころは、ビジネスを作る、海外と関わる仕事をしたい、といったことは考えていましたが、スタートアップ志向は全くありませんでした。そもそも、新卒で就職活動を実施していたころはスタートアップという言葉に馴染みがありませんでした。

転機となったのは米国駐在ですね。駐在先で仕事をしていたのは勤め先商社の米国における資源ビジネスを行う本社のような組織で、その会社にいたプロ経営者らのもとで働きました。彼らは経営やリーダーシップに非常に長けており、世界的な舞台で組織を率いている姿に憧れるようになりました。2012年から2013年頃のことです。


―― 大学院留学やスタートアップへの転職は、就職先に不満があったからなのでしょうか。

B氏 商社時代に担当していた資源ビジネスの仕事では修羅場体験ができないと感じていました。大企業に在籍していると、自分で意思決定を下すというよりも誰かに意思決定をしてもらう局面が多いです。一方で駐在時代に出会った憧れの経営者たちは修羅場を経験したうえで、意思決定を下す立場におり、腹が据わっていましたので、修羅場体験をしないとプロ経営者、リーダー、そして事業を作れる人にならないと感じました。

また商社という環境は非常に守られています。仕事は基本日本語でのやりとりですし、会社のお膳立てがあります。真のグローバル人材になるためには、MBA留学を通じて一個人として多国籍な人達がいる組織に放り込まれる経験が必要と考えたんです。ただMBA留学を決めた当時はスタートアップへの転職はピンと来ていませんでした。


総合商社を退職、MBA留学で目指すべき経営者の姿の解像度を上げスタートアップを目指す

―― スタートアップへの関わりはいつから持つようになったのでしょうか。

B氏 MBAプログラムにコンサルティングプロジェクトをクラスメート数人と組んで実施するというものがありました。コンサルティングを行う先は自分で決められるということを知り、スタートアップかオーナー企業であれば意思決定が早く面白そうだし、以前から気になっていたスタートアップについて学べる機会だと考え、留学前からスタートアップにコンタクトを取るようになったのがスタートアップとの接点を持ったきっかけです。興味のあるスタートアップにドアノックでコンタクトを取るなかで支援先に選んだのが、その後転職することになったハードウェアスタートアップでした。

1か月間のコンサルティングのなかで、オンライン会議で事前にすり合わせて毎週打ち合わせを行い、最後に最終報告としてプレゼンテーションを実施しました。一般的なインターンシップよりも企業との距離感があったと思いますが、コンサルティングのなかで実施した市場調査を通じてそのスタートアップの日本と海外でのビジネスやプロダクトの特徴について把握することができました。


―― 他にもスタートアップに行きたいと思ったきっかけやイベントはありましたか。

B氏 留学先の大学周辺はサイエンス・テック系のスタートアップのコミュニティがあり、そのコミュニティとの関わりができたことや、MBAプログラムで支援した別のスタートアップがユニコーンになるなど、スタートアップのダイナミクスを間近で見られる環境に身を置くことができました。

ゼロイチを作り出そうとしている人達と関わりを持つことで、外資・大企業とは違う手触り感がある経営というものを知り、経営者になるという具体的なイメージが沸くようになりましたし、スタートアップは最先端のテーマに取り組んでいることも多いので、スタートアップに関わることへのワクワク感を直観的に重視するようになりました。


一方で家族からの転職反対も。商社からスタートアップへの転職はアンラーニングに苦労

―― 留学や転職といったキャリアチェンジについて、ご家族からの反応はありましたか。

B氏 MBA留学やスタートアップへの転職に対するいわゆる嫁ブロックはありましたが、アメリカ駐在の後半には大企業は頑張らない方がコスパがよく、このままだと自分は腐ってしまうし、そんな姿を夫として父親として見せたくないからチャレンジさせてほしい、ということを妻に伝えて突き進ませてもらいました。

生活に必要な最低金額を計算し、一時的には年収は下がるが今後の給料は右肩上がりになると伝えましたが、妻は、自信がありそうでそこまで言うなら、と最終的には私に意思決定を任せてもらいました。

留学後の就職先として、スタートアップと大手企業関連のベンチャーキャピタルとで迷った際にも、ベンチャーキャピタルに内定をもらったと言うと妻は安堵しておりましたが、スタートアップへの入社を伝えた時には当時貯金が少なかったこともあり落ち込んでいる様子でした。ですが、ベンチャーキャピタルに行くという選択は、将来的にスタートアップで経営に携わるという目標があるなかで、私としては置きに行ってしまう感覚があったため、選択しませんでした。

スタートアップに転職してからは、子供がいたこともあり反対されたこともあります。アメリカ駐在、イギリスへMBA留学、オランダでスタートアップ勤務、と数年のうちに2人の子供を連れて海外へ引越す必要があったというのは激しすぎた、ということだと思います。

―― 商社勤務やMBA留学がスタートアップで働くことに活かされた点はどのようなことですか。

B氏 商社時代に鍛えたわかりやすい資料を作る能力や、ビジネスモデルの型やビジネス全般の常識をもとにアウトプットを一定のクオリティに仕上げる能力は、スタートアップにはそういったことができる人が少ないので役に立っていると思います。

MBA留学では多国籍なメンバーがチームを組み、主張が強い各個人の意見をまとめながら、短期間で成果を出すことが求められました。その小さなカオス経験もスタートアップに転職した際に緩衝材になったと思います。


―― スタートアップでの苦労はありましたか。また、どのようなアンラーニングが必要でしたか。

B氏 ハードウェアスタートアップ転職後、最初の半年間が苦しかったです。意思決定をするための前提情報がなかなか揃わないことにもどかしさを感じることが多かったです。商社では、意思決定に必要な情報を得るためのチームもリソースもインフラもあります。しかしスタートアップではスピードが求められるので必要な情報が少ないなかで意思決定をする必要があります。半年のあいだで100の情報をもって意思決定するのではなく、20の状態で意思決定をするゲームだと腹をくくり、雑でも早く進めるというアンラーニングをしました。ただ、アンラーニングは非常にストレスフルでした。


―― 最後に、これからスタートアップに転職を考えている大企業人材へのメッセージがあればお願いします。

B氏 自分の選択肢や市場価値を常に客観視することが大切と考えます。たとえば、人材エージェントと定期的に話をしたりLinkedInや転職サイトの自己PRを常に更新するといったアクションをすることで、自分が食いっぱぐれることはないか、自分の経歴だとどのようなキャリアの選択肢があるのかを把握することができます。

やりたいことやビジョンがあっても機会がついてこないと何もアクションできません。常に機会をアップデートし、やりたいことを追求していく中で、最適な選択肢を目の前に置いておくことが大事だと思います。


駐在時代の尊敬する経営者との出会いやMBA留学時のスタートアップコミュニティとの出会いを通じて、ご自身のやりたいことを明確にし、家族の反対がありながらもその後スタートアップでキャリアアップされているのが印象的でした。

スタートアップに転職するしないに関わらず、大企業人材は自らの”やりたいこと”と”機会”を常に最新の状態にするために、まずはスタートアップコミュニティに飛び込んでみる、スタートアップに詳しいエージェント等と話をしてみる等、自らの市場価値を把握することが必要なのかもしれません。

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