【Interview2】スタートアップ連携の前に、事業部の課題・ニーズを知る
「ソフト・ハード融合」スタートアップと共創パートナーの連携ケーススタディを取りまとめるにあたって、ソフトウェア・ハードウェア融合領域に関するスタートアップに豊富な支援実績・専門性を持つ有識者にインタビューを実施。
今回は、株式会社ケイエスピー インキュベーション・インベストメントマネージャー 栗田 秀臣氏に話を伺った。
コミュニケーション方法やパートナー探索のチャネルの使い分けが重要
―― 事業会社とスタートアップの出会い方や連携について、この1~2年でどのような変化があったでしょうか?
ここ2年で、オンラインでのコミュニケーションが主流になり、事業会社とスタートアップが出会うイベントや個別面談でも、オンラインで実施することが増えました。これは、両者の「出会い」を効率的に進めるという意味では、プラスに働いたと思います。
一方で、オンラインをきっかけに信頼関係を構築し、そのままオンラインでのコミュニケーションが主流になったようなケースでは、お互いの関係性の脆さが表層化しているのではないでしょうか。これまではリアルでの信頼関係の上で、オンラインでのコミュニケーションが行われているケースも多かったですが、状況は徐々に変わってきています。
事業会社とスタートアップの連携は、不確定要素が多いため、ニーズ・課題とソリューションを機械的にマッチングさせるようなアプローチでは上手く行きません。むしろ、短期的にはマイナスであっても長期的に大きなベネフィットを得る「投資」として、両者が納得できるようなビジョンを構築する必要があります。このビジョンの構築を、オンラインだけで行うのは難しいでしょう。
―― 事業会社やスタートアップが、そのようなリスクを意識せずに活動を進めているケースは多いのでしょうか?
多いと思います。そのようなケースでは、オンラインか対面かといったコミュニケーション方法だけでなく、パートナー探索のチャネルもうまく使い分けられていません。その結果、せっかく時間や工数をかけたのにパートナーの候補が見つからない、候補はたくさん見つかるが具体的な話に進みそうになったタイミングで実は条件と異なることが後になって分かる、といったことが起きています。
事業会社とスタートアップが接点を持てる機会・チャネルはここ数年間で一気に増えましたが、それ故に、自社の現状を踏まえて何が最適かを選択することが難しくなってきていると思います。
まずは、自社の「現場」が求めているソリューション、その「レベル」を把握することが重要
―― それでは、事業会社が、自社にとって良い連携先を見つけるために、どのような点に気を付ければ良いのでしょうか?
つまるところ、「自社にとって何が必要か?」をちゃんと分かっていることが重要だと思います。もちろん、これは、新規事業開発等の部署に閉じた話ではありません。ハードウェアを介して課題を解決するソフト・ハード融合領域では、「現場」の事業部がユーザーになることも多いです。だからこそ、「現場」のニーズを把握していることが、より重要になります。
実際に「現場」を見て、話を聞くことで、どのような性能品質・安全性の製品であれば、受け入れられるのかの「レベル」を知ることができます。その「レベル」が分かれば、スタートアップの事業化段階も踏まえて、より自社に合ったパートナー探しが可能になるはずです。
多くの事業会社で、「どうすればスタートアップに出会えるか」の議論は盛り上がっている一方で、「どのレベルのものを受け入れて活用するのか」についての議論はおざなりになっているように思います。
―― 今までの話に関して、スタートアップとして気を付けるべきポイント等はありますか?
今まで「受け手」として事業会社についてお話をしましたが、「送り手」であるスタートアップにも同様の観点での整理が必要です。自社の事業化段階や共創パートナーの候補が求める「レベル」を踏まえて、社会実装に向けて、誰と・どのタイミングで連携すべきかを検討することが重要です。
社会実装の初期段階、自社のコア技術が何に使えるかが明確でない段階のスタートアップは、まずターゲット候補の業界の課題や製品化の技術・コスト的ハードル等を、実際に会って話を聞くことで理解することが重要です。その点で、先ほどお話したオンラインでのコミュニケーションも効果的な方法の一つだと思います。
これらの活動を通して、自社のターゲット業界が絞り込めるようになり、また、それぞれが求める「レベル」を知ることができます。そうすれば、例えば、「まずは自社で活動を進めて、ソリューションがモノになったタイミングでこの会社に声をかけよう」といった戦略・計画を立てられるようになります。
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