【イベントレポート】「あなたの市場価値はいくら?」、10年後も社会で必要とされる人材になるためのエッセンス
短期的な転職ではなく中長期的なキャリア形成の場として、スタートアップにチャレンジする人を増やすことを目的に開設されたCareer Academy。2021年10月15日(金)に開催された第5回講義の模様をご紹介します。(前回レポートはこちら)
登壇者の紹介
―― 西中 それでは、登壇者の自己紹介からお願いいたします。
西尾 株式会社みこまるの西尾です。新卒で外資系のIT企業に就職後、当時のリクルートエイブリック、現在のリクルートキャリアに転職して人材領域にキャリアチェンジしまして、そこから約17年この人材業界に携わってきました。2010年頃からは、初めて外部のプロに依頼して採用活動を行おうとしているベンチャー・スタートアップ経営者の最初の転職エージェントになることが増えました。同時に個人の方たちも、求職をしている方ではなく今も活躍しているけれどもっと挑戦できる場所がないかという、「困ってはいないけれど悩んでいる」人材からの相談を受ける機会が多くなりました。それにより、レジメと求人情報のキーワードマッチングではなく、企業側の課題と個人の志向を前提としたポジションメイクをする動きがメインになって今日に至ります。
このように、転職エージェントの立場ではありますが、ベンチャーにとってのファーストエージェントとして人材採用に携わってきたり、個人の方のキャリアメイクをしてきたことで、企業の創業期からのフェーズの遷移、当時入社した人の現在など、ベンチャー界隈の歴史を人の側面から見てきていることも一つ特徴かなと思っています。本日はよろしくお願いいたします。
加藤 株式会社WARCの加藤です。西尾さんとキャリアが少し似ていて、一貫してスタートアップ領域の人材紹介に携わってきました。第二新卒でJAC Recruitmentという人材紹介会社に入社後はスタートアップに特化した支援をバリバリやっていたのですが、私自身は一部上場企業の役職持ちであることとnotスタートアッププレイヤーであることにジレンマを抱えていました。
この仕事をやるならば、その中に自分も飛び込んで経験すべきと、その後、HR系スタートアップのCOOを経験し、この経験をもっと生かしたいと2018年から現在のWARCに創業から参画し人材紹介事業を立上げて、今に至っております。私も様々なスタートアップが創業から大きくなっていくさまや、そこにチャレンジする方の背中を押す経験をしてきましたので、今日は楽しい時間になればと思っております。よろしくお願いします。
中島 WITH international Japan株式会社の中島です。最初は人材ではなくベンチャー・リンクという会社で中小企業の経営支援や業績拡大支援に従事しており、その中で良い人材が入ると会社がすごく伸びるなという実感を持っていて。その後、2010年にヘッドハンティング会社に参画したところから人材支援のキャリアを築いてきました。登録型の人材紹介会社を経験後、登録者ではなく企業で活躍されている方に声掛けして転職支援を行うサーチ型の外資系ヘッドハンティング会社で従事し、今年の1月からはタイと日本でサーチ型人材紹介会社を立上げて、現在はバンコクに住んでおります。
通常の紹介会社とは異なり、転職を考えていない人にアプローチをして採用支援活動になりますので、お二方とはちょっと違った視点でのお話ができるんじゃないかなと思いますのでよろしくお願いいたします。
テーマ①:最近の人材市場について考えてみる
”会社”から自立した個人としてのキャリア志向。リモートワークを機に生まれた時間を使った副業ニーズの増加。
―― 西中 早速ですが、まず1つ目のテーマに入らせていただきます。日々、皆さんがキャリア相談に乗っている中で、何を目的に転職を考えている人が多いでしょうか。どういった転職理由が多いのか、最近の傾向や気づきなどがあれば幅広にお聞かせください。
中島 私の場合だと業態がヘッドハンティングで、キャリア相談という入り口ではなくこちらから勤務先のメールアドレス等に連絡をさせていただくので、最初は怪しく思われるところからスタートすることになります(笑)。返信頂いた方とはオンラインでの面談を実施するのですが、「キャリアについてお話しませんか」というメールに返信をくださる8割くらいの方は 「いい話があったら聞いてみたい」という方です。
ではその人にとって何が”いい話”なのかという点を会話しながら掘り下げていくのですが、優秀と呼ばれる方ほどその軸を明確に答えられる傾向があります。例えば、自分はCFOを目指して入社したけれど、組織体制を見るとキャリアが途絶えそうだから転職したい…といったような話です。キャリアで実現したことが明確である方は、その目指すキャリアに対して時間的に短縮できるか、実現可能性が高まるか、この2つを満たせる場合に転職を考える方が多いのかなと思っています。
世の中の動きが激しくなる中、会社に自分のキャリアを左右されない生き方をしたい、そんな志向の方が増えているのでは、というのが、今、実感として持っていることですね。
加藤 私の場合はスタートアップでチャレンジしたい方にお話を伺うことが非常に多いので、シンプルに「CXOになりたい」といった話も聞きますが、スタートアップならではのニーズとして「自分で何かを築き上げたい」「もっと裁量をもって仕事をしていきたい」「今まで培った経験を今より世のため人のために生かしていきたい」といった考えを持っている方が多いかなと感じています。
西尾 お二方とちょっと違う視点ですが、今は転職市場に”2周目”のベンチャー経験者も現れ始めてています。2010年頃は初めてベンチャーに行く方も多く、今と違ってベンチャーへの転職はリスクが高い、ちょっと怖いというイメージが色濃かった時代だったと記憶しています。そこから10年以上経った今、入社したベンチャーで上場を経験しCXOになった方や、ベンチャーを2、3社経験してご本人の中でやり切った感を持っている方も出てきて。ベンチャーでボードまで行った人がその次どういうキャリアを目指すかというのはあまり前例もなく、教科書には載っていない情報だと思うんです。
そしてそれだけの年月を経ると、プライベートの方の変化も当然あって、雇用形態とか働き方の前提が変わってきますよね。そういった方々の間では、”持続可能なキャリア”をどう築いていくかというテーマでディスカッションに来られる方も最近は多い印象があります。
―― 西中 持続可能なキャリアとは何か、イメージされているところをお伺いできますか。
西尾 リモートワークや副業(複業)など働き方の多様化を背景として、何かしらの理由で働く時間や場所の制約が生まれたとしても、キャリアの選択肢は以前より拡がっているのだと思います。本日のテーマである”市場価値の高い人”は、今後どういった仕事を積み上げていけば、自分のキャリアを自分でコントロールできるようになるか…という文脈で、持続可能なキャリアをディスカッションしている方が多いです。
―― 西中 最近では、ベンチャーの経営者が育休をとったり、ワーケーションみたいなことをSNSに投稿している方もいますよね。これはまさに前線で活躍している、市場からも周りからも評価されている方のキャリアというか働き方が変化しているのかなと感じています。
西尾 確かに、昔だとフルリモートの概念すらなかったですよね。フルリモートという希望を主張できる個人、フルリモートを導入していることをアピールしていいのだと気づいた企業、との間で、そういった働き方というのも転職の新しい軸になりつつあります。
中島 「一人で食べていけるようになりたい」という考えを持っていて、実際に副業もした事あるような方は凄く増えましたね。自分の得意分野を複数持っており、お金が入ってくるところを複数作っていく。そういうキャリアが歩める、副業OKなところがいいですみたいな人が増えているのは最近の傾向かなと感じます。
西尾 昔は我々のような転職エージェントを介して業務委託案件を紹介して欲しいという個人の方の希望は非常に稀でしたが、最近は半数ぐらいの方から言われるようになりました。リモートワークが普及して、それまで使えていなかった時間が出来た、そういう背景もあるんじゃないでしょうか。インプットかアウトプットか目的は人によりますが、フルコミットとはまた違う挑戦の場を知りたいというご依頼が増えたなと、今、中島さんのお話を伺っていて思いました。
加藤 昔と比べるとスタートアップの企業名に詳しい人が増えたなって感じがします。紹介するとそれ知ってますみたいな感じで、こちらがちょっと恥ずかしくなることも。
個人が情報を取りやすくなったこともあると思いますが、どういう事業をしているのか、カルチャーがどうだとかにも詳しい方が増えているので、そこをスタート・起点として、そのプラスアルファ何かあるのか、ご自身の自己実現が出来るのかを個々人が考えているという感じがします。
成長意欲の高さは前提として、一緒に働きたいと思えるか、ミッションに共感・共鳴してくれるか。
―― 西中 ありがとうございます。転職する側についてお伺いしたところで、次は企業側、採用したい企業や経営者側についてお伺いしたいと思います。企業経営者から「●●な人材」、どんな人材が欲しいと言われる事が多いのでしょうか。
加藤 最近言われて頭を悩ませたのは、「チャーミングな変化球をお願いしたい」というリクエストですね。カルチャーフィットは前提としたうえで、経営者自身にないものを持っていて気づきを与えてくれる、人間的に良い方がいい、というオーダーでした。
スキルベースだと、そのスキルが満たされないと出来ないなと不満を感じてしまうけれど、人間的にカルチャーが合う“チャーミングな人“なら、次は一緒に頑張ろうと思えるので、組織の一員として一緒にやりたいと思われるかどうか、こういうことをおっしゃる経営者の方がいて、勉強になりましたね。
西尾 一昔前のスタートアップでは”成長意欲”が高い人が求められていたと思います。事業成長と自己成長が同義のような。一方、最近はその自己成長への意欲は前提として、どういう社会課題を解決したいのかとか、利己より利他と言うんでしょうか、見据えているものや視座が一歩先に行っている人が良いという企業が増えてきている印象です。
―― 西中 個人としての優秀な人を求めるところから、自分たちの”仲間”になれる人を探しているところへ変化しているのでしょうか。
西尾 ベンチャーの存在意義として、何のために起業して仲間を集めてこの事業をなそうとしているのかが、昔よりも結構シビアに問われている気がしています。何を実現しようとしているのかを表明している以上は、自己成長したいだけの人ではなく、そのミッションに共感・共鳴してくれる人を求めたいのだと思います。
昔は優秀な方はまず採用して後から動機付けしても良い、とにかく来てもらいたいと考えていた企業もあったように思いますが、今は優秀な方がベンチャーに行くことが一般的になったため、企業側もしっかりと選ぼうとしている意思を感じます。
―― 西中 自分たち、自分たちのミッションに共感してくれる人を探しているというのは新しい軸ですね。中島さんはいかがですか。
中島 ここ2,3年は欲しい人物像をバイネームで言われることが増えましたね。例えば「SmartHRのAさんみたいな人が欲しい」とか。昔と違ってベンチマークになる会社が結構増えてきたのかなと思います。
今、自分の会社でCMOがいない、CFOがいないとなった時に、スキルとかそういう話よりは参考とする会社に在籍している人と言う方が表現しやすいみたいで、モデルケースが増えてきたんだろうなと、感じています。
―― 西中 時代時代にベンチマークになる会社がありますよね。私自身はマネーフォワードのBさんのお名前をよく聞きますが、お三方がよく名前がある会社があればお伺いできますか。
中島 名刺管理のSansanさんとか、プレイドさんとか。
西尾 あと、メルカリさんも多いですね。マネーフォワードさんとか。
加藤 皆さんがおっしゃった企業が多い印象ですが、CXOだけでなくIRとか経理とかそういう色々なポジションでそういう話が出てくるようになったので、イメージしやすくなってきて良いことだなと思っています。
人材の本音や感情を引き出すことは、転職意欲をはかるだけでなく、企業との相性を見極めるためにも重要なプロセス。
―― 西中 ありがとうございます。人材側と企業側の視点でお話を伺いましたので、次は皆さんの視点をお伺いしたいと思います。
人材側と企業を繋ぐために転職相談者の方に対して、普段どんな質問をされていて、どんな所を見ているのか、キャリア相談型で活動される西尾さんと、サーチ型で活動される中島さんは違った視点があると思いますが、順番にお伺いできますか。
転職相談者の方に対して、どんな質問をしますか?また、どんなところを見ようとしていますか。
西尾 私は基本的にベンチャー志向の方とお会いしているので偏りがあるかもしれませんが、悩みの本質や何を実現したいのかを知ることですね。本人に聞くのはとてもシンプルですが、そこを見誤らずにきちんと本音を引き出して理解して、どことお繋ぎするべきなのか、その情報を見誤らないことが重要だと思っています。
一言で「経営経験を積みたい」と言っても、事業経営なのか、経営の意思決定なのか、その人の言う経営経験は何を指しているのか、絶対に解消したいことが何かを知ることに尽きるかなと。最終的にはやはり経営者との相性って非常に重要だと思いますので、どういう経営者となら、この方が自分らしく働けるかみたいなところは、ご本人に聞くと言うよりはこちらの五感で一生懸命感じ取るっていう感じですね。
中島 私は結構、人のドロドロした感情のところを拾い上げることをやっています。人の原動力は本能と感情と理性、大体その3段階かなと思っていて。眠れない、食べられないとか、生命の危険、「本能」の部分になると結構エネルギーが強くて絶対転職したい人が多い。上司が嫌いとか仕事に飽きたとか「感情」の部分だと、転職の意欲は中程度、意外にミッションに共感とか自己実現系の「理性」の部分だとロジックでひっくり返ることがあるので、本当にそう思っているのかはよくよく聞くようにしています。
サーチ型の場合、特にその転職意欲の“ありなし“を見ていて、どれだけ確固たるドロドロした感情を持っているのかを聞くようにしています。子供時代のコンプレックスとかがあれば雑談の中で聞いていて、そうするとあの社長も同じような考え方だったり、そういう話をしていたなみたいなところがあると、そこをヒントにして引き寄せたり。
―― 西中 まさに就活の時にやっていた自己分析みたい感じだと思いますが、その方の感情や経験してきたものは人材と企業をお繋ぎする上で、重要なところなんでしょうか。
中島 難しいものに対してチャレンジするのが好きな人なのか、常に新しいものを考えてそれをやりたい人なのか、それとも既存のルールをこうガッチリ固めていきたい人なのか、その性格によって大企業が合うとかベンチャーが合うとか、だいたいイメージがつくかなと思っています。時々、その人が志向している職種は違うなという時があるんですよね。
例えば、コンサルをやっていた人が、事業会社に向いているかどうか。プロジェクトごとに毎回違う企業・人と働けるコンサルの環境を心地よく感じている人が、事業会社でいつも同じメンバーと今後10年20年ずっとやって行けるのかどうか、その辺を指摘できるようにするためにも、その方の性格や本質は大事な情報と思っています。
―― 西中 加藤さんは求職者の方にどういった質問をされますか。
加藤 お聞きするエピソードは2つあります。ひとつは、「これまでどんな課題解決して、どんな再現性があるか」。経営者は会社のビジョンから逆引きして課題を解決してくれる人が欲しくて採用すると思っていますので、そこにフィットするかどうか。会社によって課題は大きく変わるので、そこが企業と個人と両方にハマるかどうかを確認します。
もうひとつは「チームでどういった成果や活動をしてきたか」。仕事は1人で出来る範囲はしれていてやはりチームでやるものと思っている中で、どういったエピソードがあるのか。この2つがリンクするストーリーを聞かせていただいていますね。
スタートアップの”フェーズ”により、どういう人材が活躍できるかは変わる。
―― 西中 西尾さんがおっしゃったように企業と人との相性、アンマッチにならないように色々な観点でお話を聞かれていると思いますが、相性はどうやって見極めているか、ミスマッチのない形で繋ぐために大事にされていることがあればお伺いできますか。
中島 スキルはあまり見ていなくて、結局その人が何をやりたいか、今までやってきたものよいは”WILL“を重視しています。そもそもやりたくないことなら転職する必要はないので、次のキャリアでやりたいものがある程度明確にあればそこを聞いて、それが実現できる会社をご紹介する。相性面はお話を続ける中での選択肢から見ていく形になるかと。
何をやりたいか、どういう事象があって、どうしてそれをやりたいのを言語化できてないと、結局面接に行っても上手くいかないケースが多いかなと思います。
西尾 相性見極めの入り口としては、フェーズフィットとカルチャーフィットを重視しています。個人の方では取りに行けない、我々だから知り得る情報と思うので、お付き合いの中で企業に入った時の違和感があるかどうか、カルチャーフィットは見極められるかなと。
フェーズフィットはカオス耐性があるかどうか、例えば大企業1社で長く勤めてこられた方が、いくらベンチャーに興味があっても越えなきゃいけない壁がいくつもあります。これは勝手が違いすぎてカルチャーギャップはすごく大きいと思うんです。それでもやりたい何かがあるのか、未整備の与えられない中でも自分で取りに行けるかどうか。自らの専門性に集中したいスペシャリスト志向の方は、成熟している企業の方がお互いにフィットすると思います。
―― 西中 企業のフェーズフィットについて、転職支援活動の場においては当たり前の部分かと思うのですが、視聴いただいている方に向けてこういうフェーズの企業はこういう人材が合うというところをお伺いできればと思うのですが、加藤さんいかがでしょうか。
加藤 フェーズが浅ければ浅いほど、やりたい仕事だけやれる状態ではなくて、そんなこともやるの?という泥臭い仕事も結構出てくるというのは1つあるかなと。総務とか営業とか、総力戦なので、先ほども“カオス “って出てきましたが、そういう状態も楽しめるかは結構大事かなと思います。
フェーズが進んで組織が大きくなってくるとマネジメントやチームを作っていく流れになると思います。その部分で経営者と自分との考え方が合うかとかもあると思いますね。仕事に関してはカオスな状態から組織が大きくなるにつれて細分化されていくので、そこに理解があるかというところでしょうか。そういった部分のフィットというのはあるかなと思います。
―― 西中 企業側のフェーズとして意識しているもの、指標としているものはあるのでしょうか。
加藤 資金調達とかIPOに向けてのフェーズや事業の成長具合は一つの指標かなと思います。
西尾 個人の方でもIPO前後は見ている方はいそうですよね。数字で区切るなら例えば50人超でマネジメントや組織体系ができ、100人超で制度ができ、初期には活躍した人が離れていくとか人の入れ替わりも起きてくるのかなと。あとは職種によってものづくりをしたいエンジニアの方が“売る“フェーズで入ってしまうと思うような活躍ができない場合も出てくると思いますので、実現したい能力を発揮できるタイミングなのかは企業によって違いますので、どの会社にどのタイミングに入るのかで全然違ってしまいますよね。
テーマ②:人材市場の歴史から考えてみる
リーマンショックの時代であっても、転職に成功しているのは、その会社のビジネス・未来を面白いと感じるかどうかを軸にしている人。
―― 西中 それでは、2つ目のテーマに移りたいと思います。時間軸を踏まえた転職の市場価値について議論できればと思います。厚労省が出している数値で、直近の2020年の求人倍率は1.6倍と歴史的に見ても売り手市場ですよね。リーマンショックの頃は優秀な人でもなかなか転職できない状況を考えると、この10年でも大きな変化が起きているなと思います。
―― 西中 市場に大きな変化がある中、転職したくてもできないようなリーマンショックの厳しい状況の中でも転職されて、当時描いたキャリアを実現されて今なお活躍されている方がいらっしゃると思います。そういう方々はどういう考えで転職されて今どういうキャリアを歩んでおられるのか、その人物像をぜひお聞きしたいのですが、加藤さん、いかがでしょうか。
加藤 当時はまだまだスタートアップが多くなかったので模範となるキャリアはなかったかもしれませんが、そこに向けて飛び込んで自分なりの答えを出している方は経営者になっていたり、スタートアップを一周して大手に戻っていたりしますね。
―― 西中 単純な好奇心になりますが、リーマンショックで世の中どうなるかわからない、年収とか経済的な条件も今と比べてよくはないと思いますが、なぜ転職しようと考えたんですかね。
10年前に転職した方で、成功している人はどんな人ですか?
加藤 昔のスタートアップの年収は今と比べて全然低かったので、むしろ最近は恵まれた環境だと思います。とにかく何かを変えたい、自分で何かをやっていくことに賭けたかったんじゃないかないのかなと。
中島 2011年だと私は登録型人材紹介の会社で会計士の転職支援をやっていた頃で、日系の大手監査法人が一斉に早期退職を募ったんですよね。会計士のような資格を持っていても安泰ではない、大量に人が流出する買い手市場の時代でした。肩たたきにあっている人を見ていた優秀な人たち、特に30前後の若手会計士が、自分自身の未来はこの法人にはないと判断して、積極的に相談をしに来たり、動いていましたね。相談の結果、40代50代になっても生き残れる、法人に残る方が自分の地位が安泰だと判断した方もいて、現在はパートナーになっているケースもあります。
西尾 当時はリーマンショックといいながらも私の周囲のベンチャーは未来しか見ておらず、やりたいことがあって創業しているので、チャレンジしたい人がいれば採用したい、という感じであまり不況は感じていなかったんですよね。
10年前にベンチャーに入り、今は役員クラスになられている方のことを複数名思い返しながら今話していますが、特徴としては大手から転職した方が多かったですね。自分で操縦桿を握りたい、キャリアの意思決定も会社ではなく自分でしたかったのかなという点と、できるだけ小さいところに行って作り手側に行きたかったのかなと思います。
ただ、思いはあっても実際に飛び込む人ばかりではなかったです。目先の年収が落ちても自分で事業を伸ばせばいいと考えられる人かどうか。当時は、今ほどストックオプションとかの話もあまりありませんでした。何かを得るために持っている者を手離せた人、手離すことをリスクと思わなかった人がピュアに挑戦したくて飛び込んだ、というケースも多かったように思います。
―― 西中 当時、転職された方はどういうことを考えて年収下げてでもチャレンジされていたんでしょうか。
西尾 当時はリーマンショックといいながらも私の周囲のベンチャーは未来しか見ておらず、やりたいことがあって創業しているので、チャレンジしたい人がいれば採用したい、という感じであまり不況は感じていなかったんですよね。
10年前にベンチャーに入り、今は役員クラスになられている方のことを複数名思い返しながら今話していますが、特徴としては大手から転職した方が多かったですね。自分で操縦桿を握りたい、キャリアの意思決定も会社ではなく自分でしたかったのかなという点と、できるだけ小さいところに行って作り手側に行きたかったのかなと思います。
ただ、思いはあっても実際に飛び込む人ばかりではなかったです。目先の年収が落ちても自分で事業を伸ばせばいいと考えられる人かどうか。当時は、今ほどストックオプションとかの話もあまりありませんでした。何かを得るために持っている者を手離せた人、手離すことをリスクと思わなかった人がピュアに挑戦したくて飛び込んだ、というケースも多かったように思います。
中島 特徴でいうと、福利厚生とか年収とかは聞かずに、どういうビジネスで市場規模がどれくらいあって、どこにアプローチしようとしているのか、そのビジネスの勝ち筋を聞いてくる方。そういう方はいいと思った会社の社長と最終面談まで行けば、条件面の話になる前に、もう行きますみたいな状況になっていて。その会社のビジネスを面白いと思えるかどうか、そういう視点で転職した方は、うまくいっているケースが多いと思いますね。
西尾 ある種、当時ベンチャーへ転職する人はちょっと変態というか、もの好きだとか変わっている人に分類されていたように思うんです。私からするとかっこいいんですけど、世の中一般からはわざわざそんな危ない所に行くなんてもったいないと言われたり。でもその人達はそもそも安全かどうかは気にしていないので、特に困っていませんという企業には絶対に飛び込まないんです。企業や経営者が描きたい未来との間に今どういうギャップや課題あって、自分がその課題を解決できるかどうかが知りたい、困りごとを探している人達でしたね。
市場価値は、人間性とスキルのバランス。自分が何をしたいのかを明確にし、一緒に働きたいと思わせられるか。
―― 西中 ありがとうございます。それでは、最後の質問になりますが、今回のテーマである「市場価値」、どこに行っても求められる人材の共通点、皆さんが支援してきた過去も含めて、思うものがあればお伺いできますか。
これまでの支援を通じて、企業から求められる人材の共通点は?
中島 具体例でいうと、今年4月に投資銀行出身の方の転職を支援したのですが、最終的に8社から内定を獲得したんです。どこからも欲しがられる人材で、さすがだなと思ったのは、面談前の事前準備がとんでもないんです。投資銀行の顧客へ提案をする時に近いクオリティで分析をして自分だったらどうするかを面談の場で話すので社長が惚れ込んでしまってその場で内定出してしまう。最終的には、何も言われていないのに、資本政策を資料4枚にまとめたので企業側に渡してくださいとかまで。
内定を出された企業に話を聞くと、あのクオリティで仕事をしてくれる再現性の部分を評価していて、その行動力も含めてそういう方は内定をバンバンとってしまうんです。実際には、元々の要件とズレている会社もあったんですが、この人と働きたいとか、この人が入ることで社内に化学反応が起こるんじゃないかみたいなところを面談の場で証明できる人はすごいなと思いましたね。
西尾 職種とかスキルとか、課題解決の再現性とか、そういう意味で優秀かどうかもとても大事なのですが、それ以上に、やはり人として信用できるとか、愛されるかどうかなのかなとも思います。
この人と働きたい、一緒に時間を共有したい、これから迎える困難を乗り越えたいって思わせる人っていますよね。もちろん前提として、自ら仕事を作れる人、何が起きているのかを全体俯瞰できる人、その時々の経営上の課題を手当てしに行ける人、そういったスペシャルなゼネラリスト系の人はすごいモテモテなんですが、その上に人間性が乗っちゃうと手が付けられないっていうか。どの経営者からもオファーされる人になりますね。そういう人って検索しても見つけられないので、出会ってしまったら企業は採用したくなりますよね。
加藤 皆さんがおっしゃった通りでソフトとハード、人間性とスキルのバランスは大事ですね。似た者同士が集まったチームであっても、全員もっているものは違うので、自分のスキルを活かしながら臨機応変に対応出来ることが、すごく大事かなと思います。
また、思いの部分で、何がしたいのかは重要だと思っています。我々WARCでもNG理由を企業様から送っていただきストックしているものが1,000弱ぐらいあるんですけど、その半分以上はマインドとかカルチャーマッチの部分なんです。そういう意味では、面談した方には思いはあったのに、しっかり言葉にできなかったようなケースもあるのかなと。だからこそ、チャレンジする上で、自分がどうしたいかというところは自分の中でしっかり整理して、面談などには臨んでいただきたいと思います。
―― 西中 本日のキャリアカデミーは以上となります。どうもありがとうございました。
今後のCareer Academyについて
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