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【イベントレポート】スタートアップのフェーズ別にみる「仕組化人材」の特徴|「仕組みを創れる人材」のためのキャリアパス#2

※本記事は、当団体が制作したWebサイトの掲載記事を再編集後、移設しており、肩書・内容は掲載当時のものとなります。

短期的な転職ではなく中長期的なキャリア形成の場として、スタートアップにチャレンジする人を増やすことを目的に開設されたCareer Academy。

本記事では、連続ゼミ形式の特別プログラム「スタートアップスクール」第2回(2022年1月20日(木)オンライン開催)の模様を抜粋してお届けします。

●スタートアップスクールについて
スタートアップスクールは、『「仕組を創れる人材」としてのキャリアパス』を切り口として、「①スタートアップで働くことで得られる資産」を知り、「②スタートアップで重宝される仕組化人材」について理解を深めたうえで、「③実際のスタートアップの実情を知る」の全3回の連続ゼミ形式にて開催するものです。
第2回は「アーリーステージ/ミドルステージにおける仕組化人材とは」をテーマにディスカッションが行われました。本記事では、その模様を抜粋してお届けします。

第一部:アーリーステージにおける仕組化人材とは

御林 洋志氏(株式会社Clear)
取締役

慶應義塾大学法学部卒業。在学中に公認会計士試験に合格。
2009年、有限責任監査法人トーマツへ入所し、上場企業の法定監査、未上場企業の予備調査・株式公開支援業務に従事。
2013年からグローバル・ブレイン株式会社にて、キャピタリストとしてスタートアップへの投資・支援に従事。
その後、株式会社KVPの立ち上げからパートナーとして参画し、20社を超えるシード期のスタートアップへの投資・支援を実行。Clear Inc.のリード投資家も務める。2021年1月よりClear Inc.へ入社。ファイナンス・コーポレート、及び事業戦略の策定、グローバルまで幅広く管轄。2021年6月より取締役に就任。

山下 嘉彦氏(株式会社KINS)
HRマネージャー
大学卒業後、リクルートグループに入社。人材領域の法人営業、支社での組織マネジメント、コンサルタントとして特定業界の全社営業・商品戦略の立案、推進に従事。
2018年、電力系ベンチャー企業へ転職。事業開発、人事部長、コーポレートデザイン室長として、人事制度改定及び導入施策の企画、実施。また、コロナ禍におけるリモートワークの導入、組織基盤づくりに従事。
2020年12月KINS入社。HR部門を統括。

インタビュアー
ジャフコグループ株式会社 金沢(キャリアアカデミー責任者)

経営・事業・施策を可視化することで、点が線になり、PDCAが回せるようになる

―― 金沢  まずは自社で取り組んでいる、もしくは取り組んできた「仕組化」について教えてください。その中で、「仕組化」ができたのはこんなスキルや経験があったから、ということもあれば教えていただけますでしょうか。

御林 いくつかあるのですが、分かりやすいところでは「経営・事業の見える化」が一番大きいと思います。元々、弊社ではチームごとのKPI管理はそれぞれがしっかり行うという考え方が強かったのですが、そこを全社単位で統一しました。「経営・事業の見える化」として大きく3つ、1つ目は「①経営管理数値の優先順位の整理」、2つ目は「②数値化できていないものもしっかり見える化・整理」、3つ目はスタートアップの人間はあまり会計分野に詳しくなかったりするんですが、「③予実比較をしっかり全社で共有する」ことで事業と会計のつながりを自然にインストールできるようにすることを意識しました。

具体例でいうと、①はチーム単位、会社単位、株主報告用、事業計画数値などばらばらになっていることも多いと思うんですが、私たちは基本的に管理するKPIを同じフォーマットに整えました。

②は弊社で分かりやすいのがブランド投資の効果でしょうか。ブランドはブランド力を高めるためですが、広告宣伝費の中で弊社だと“デジタルマーケティング”というCPA換算がしやすい予算と“ブランドマーケティング”という直接的には売上に紐づかないブランド力の向上のための予算があります。これらの費用対効果を見える化できない限りは大きな投資は難しいので、しっかりと認知率を定点観測する必要性があると考え、お客様のブランド連想がどう変化するかを他ブランドとの認知率の比較やアンケート調査を定点で調査したことが一番分かりやすい部分かなと思います。

―― 金沢  ありがとうございます。ちなみにこの導入前後では結構変わるものでしょうか。

御林 共通言語が明確になったことでしょうか。共通の見えるべき目線が合えば言語も一緒になるというところがすごく大きく、コミュニケーションが全員同じになります。あとは、社内の月次定例用資料と株主定例用の資料をそれぞれ作るのはめちゃくちゃ手間なので一緒のフォーマットにしたというのもありますね。

―― 金沢  山下さんは入社して1年1ヶ月、ここまで取り組んできたもしくは取り組んでいる「仕組化」について教えていただけますか。

山下 御林さんが話された経営と事業という点とすごく似ていて、付け加えるなら日々の施策ですね。業務なのか施策なのかというところはありますが、入社当時、人数も少ないので、その場で社長があれやろう、これやろうと都度、口頭で確認していたんです。その後、事業が成長していくにつれ、やるべきことも増え、関わる人数も増えていくと、どうしても情報が点で終わってしまうことが増えてくる。会話の中で“確認事項”ばかりが増えていくんですよね。そうなると、限られた時間の中でやるべきことが遅くなり、生産性が悪くなってしまうので、まずはしっかり定例の場を作ること、議事録などドキュメントを管理していくことでなるべく「点」ではなく「線」にしていくことを意識しました。

―― 金沢  「点」ではなく「線」にしていく、具体的に「線」とはどういうことでしょうか。

山下 例えば、マーケの施策でこういうことやっていこうよと決める定例の場があるのですが、その日で終わるものではなく、デザイナーやバックオフィスなどの色々な人が絡んで一つの施策が完了していくものなので、その定例の場の「点」ではなくToDo分けにして「線」にする。1週間後に誰が何をするのかなどをしっかり可視化して、次回の定例までにその進捗を追えるような状態にしておくことですね。

―― 金沢  定例で出てきたことをしっかりワークするように進捗管理を含めてやっていく、線にするということですね。大企業であればやっていそうなことをスタートアップではできてないことも多いのでしょうか。

山下 スタートアップの強みは、スピード感を持ってその場で決め、物事を進められること。一方で大手の場合、会議体を作って議事録作ってと、バトンを渡していって最終的に一つ結論が出る、決裁フローが明確にルール化されています。。スタートしたばかりの組織であっても、事業が拡大する中でアジェンダや関わる仲間も増え、意思決定や遂行プロセスも複雑化していく。いずれ大手がやっているようなことが自然と必要になっていく。そのプロセスの一つとの認識ですね。

御林 シード・アーリーステージの時からドキュメンテーションを残す癖をつけておくと、あとあと楽、という感覚です。幸いなことに私は10番目の入社ですが、入社当時からドキュメンテーションを残す文化があったので、当たり前がどうセットされているかどうかだけなんだと思います。残すことが当たり前ということが、企業文化にとっても中長期を見据えたスケーラビリティにおいても非常に大事と思いますね。

―― 金沢  ドキュメント無くふわっと意思決定をした結果、ケースバイケースの意思決定でカルチャーもふわっとしてしまう、みたいなことがあるかもしれないですね。お二人が「仕組み化」に取り組めた理由、過去の経験で思い当たることはありますか。

御林 会計士時代をベースとしたVC時代の経験がすごく大きいと思います。会計士時代に数値と事業のつながりを理解する土壌ができたと思っていて、VC時代に実際にシード期のスタートアップがどういうところで躓きやすいのか、より深く体験して解像度高く手触り感を持てていたのは、過去の経験が大きかったのかなとは思います。ただ会計士の資格がどうとは全く思っておらず、事業を俯瞰で見てPDCAを回してという視点の方が重要なのかなと思います。

山下 私も直近ベンチャーに在籍していたことで、その重要性に気づいたというのが大きいです。大手在籍時はその重要性にあまり気づいていませんでしたが、思い返せば似た価値観の人が多く同質化されている組織で、事業も役割も決まっていて、こうすればこういう結果が出るというのが、確立されていたと思うんです。わざわざ議事録取らなくてもいいぐらい、複雑なアジェンダをディスカッションすることも、今思えばあまりなかったと思います。

ただ、それがベンチャーでは通用しなかったんですよね。皆さん前職も異なる中で、変化も大きいので、いい意味でも悪い意味でも朝令暮改も当たり前。なので、全員が陸続きで同じ会話をしていくことが、改めて重要なんだなと実感しましたね。

―― 金沢  お2人とも自分の経験から重要性に気づいたというのが面白いですね。重要性に気づいて実行できたのは“スキルセット”が備わっていたからなのでしょうか。

御林 課題に気づくことが重要だと思います。ゼロベースだと難しいかもしれませんが、課題にさえ気づけばいくらでもできると思います。弊社のKPI管理表は、誰が見ても美しいかというと全くそんなことはないので、目的や課題感がセットアップされているかどうかが大事かと思います。


俯瞰するだけの人材は不要。具体と抽象をバランス良く行き来する癖が大事

―― 金沢  ここで質問を挟ませていただきます。スタートアップ、特にシード期は事業を事業として捉えづらい、難易度が高くなるステージになりますが、お二人はどのような観点で事業を捉えているのかをお伺いできますでしょうか。

御林 事業を俯瞰して見ることが癖づいている人って意外とスタートアップの初期にはいなくて。シード期だとそれどころじゃなくて泥臭く進めるフェーズだと思いますが、少し事業が動き始めた段階になれば俯瞰してみることがすごく大事になってくると思います。

俯瞰の考え方の一つは、未来視点で考えること、中長期の戦略ストーリーを時間軸で見た時、現在地はどうなのか。もう一つはチームやメンバー単位だと難しいかもしれませんが、例えば売上というKGIからどう因数分解されていくのか、大項目からブレークダウンして、それぞれどのチームや施策に紐づいていくのか。視点の高さをしっかり持つことでより遠くが見えるようになり、より遠くが見えることは範囲が広がって見えてくる。プレイヤーとしてもマネージャー・経営陣としても俯瞰してみるということが重要だと思います。

―― 金沢  “時間軸”は未来を見据えてどう捉えるか、“空間軸”は経営の指標から各要素単位まで分解してどう捉えるか、未来と経営指標を見据えることで、今、必要なことは何かが分かってくるということですね。

この俯瞰の考え方はどういう経験をすればできるようになるのでしょうか。

御林 そうですね。このフェーズではこの優先順位、各フェーズによって重点部分は変わってくると思います。

どういう経験をすれば…できるだけ俯瞰してみる癖を付けることだと思います。アーリーステージのスタートアップには俯瞰だけ出来る人って正直いらないんですよ。現時点では正解かどうか分からない不確実性の中で、“具体と抽象”をバランスよく行き来する癖が大事。仮に私が事業計画だけ作れる人だったら今の会社には不要なので、それと同じ話かなと思います。

山下 激しく同意ですね。当社でも代表含めて一番会話している言葉って“因数分解”なんです。“具体と抽象”という話をされましたが、時間が無い中でどれだけアクションできたかが、結果的にどのレイヤーであったとしても大事だと思います。

俯瞰という話がありましたが、ベンチャーの場合、大手に比べて論点がどんどん変わっていくので、そういう環境にいる方は自然と「それはなんででしたっけ」に立ち返っているのではないでしょうか。俯瞰してみて最終的に何をするんだっけ、という時に因数分解という話が会議体でもよく生まれていて、それぞれが何をするかを決める、そういう意味で行ったり来たりなのかなと思います。俯瞰はそういった環境でおのずと身につくものかもしれないですね。


スピードと変化を楽しめ、コンフォートゾーンを抜けられる人はアーリーステージに向いている

―― 金沢  最後に、アーリーステージはこういうところが楽しい、醍醐味がある。また、こんな人に来て欲しいなど教えていただけますか。

山下 キーワードで言うなら「スピード」「変化」、そしてそれを「楽しめる」人ですね。弊社は階層がそこまであるわけではないので、経営者と直でもやりますし、主体的に考えることさえすればいくらでも発言も動かすこともできますので、そこを楽しめる人がいればいいですね。

御林 醍醐味で言うと、新しいことへの挑戦が大きいですね。新しいものを作っているんだ、挑戦しているんだという実感が得られます。もう一つはカオスですね。カオスなことすら醍醐味として思える気持ちが大事で、本日の登壇者皆さんも、辛い経験をたくさんしていると思います。スタートアップって辛いこと100個あれば嬉しいことが5個くらい、辛いイベントの方が多い、でもその5個の嬉しさが全てに勝るんですよね。

向いているのはコンフォートゾーンから抜けられる人。挑戦心が強くて知的好奇心が強い人ですね。30歳を超えてくると自分が培ったスキル・経験をベースにどう戦うかが前提になっていく方も多いと思いますが、それだけじゃないところ、外にはみ出して新しいことをやっていけるかどうか。それには挑戦心や知的好奇心がないとやらされる感覚になっちゃうと思うのでそういうものがある人が向いていると思います。

―― 金沢  御林さん、山下さん、ありがとうございました。

ここまではアーリーステージということで創業から数年、社員規模も30名をターゲットとしていましたが、後半はミドルステージということで100名を超えて200、300名規模の会社がターゲット、「ミドルステージにおける仕組化人材」というテーマへ移ります。


第二部:ミドルステージにおける仕組化人材とは


高橋 聖羅氏(Repro株式会社)
Division Manager / Corporate Div.
あずさ監査法人(現・有限会社あずさ監査法人)に入社後、8年間監査に従事し大手上場企業を中心とした監査業務及び会計アドバイザリー業務に従事。その後、日本マクドナルドとデイトナインターナショナルで経理マネージャーを務める。
2019年7月よりReproに参画し、経理、労務、総務、法務を束ねるバックオフィス部門であるCorporate DivisionのDivision Managerとして従事している。

中瀬 良樹氏(株式会社Legal Force)
Sales Strategy Section Manager
一橋大学大学院商学研究科卒業。
2015年武田薬品工業に入社、MRとして従事。その後、山田コンサルティンググループ、デロイトトーマツコンサルティング合同会社での勤務を経て2019年11月よりLegalForceにCustomer Successの立ち上げ責任者として入社。
2020年5月よりSales Strategyの立ち上げ責任者も兼任、現在はSales Strategy責任者に専念、従事している。

インタビュアー
ジャフコグループ株式会社 金沢(キャリアアカデミー責任者)

社員数の増加に伴う属人化からの脱却。フロントもバックも再現性を高める仕組が必要

―― 金沢  早速ですが、これまで取り組んできたもしくは取り組んでいる「仕組化」について教えていただけますか。

髙橋 「テーマ①」では事業寄りのお話だったと思うので、私は担当している経理や労務、法務などバックオフィスの観点でお話します。「仕組化」というのは仕事の再現性を高めるための仕組み作りだと思っています。前提として、アーリーフェーズ、ミドルフェーズともにバックオフィスのヘッドカウントをリッチにできないという事情を想定します。つまり、経理、労務といったセクションに最低2名はいるという状況ではなく、経理に1名、労務1名と各セクションに1人、または、特定の人に業務が集中し兼務状態になっているといったケースです。

このようなケースの場合、結果として業務が特定の方に属人化し、その方が退職してしまうと、誰もその業務が把握できていないので、業務が分からなくなり止まってしまう。また次に採用したとしても、その人に属人化した業務が新たに作られるというループになっていくと感じています。そういう状況が続くと、従業員からバックオフィス業務に対する信頼を得られず、バックオフィス側が実現したいことを実現できない環境となりお互いが不幸になります。そうならないためには、仕組化することで誰でも同じ成果が出るようにする、そういう意味で再現性の高い仕組化づくりが必要と考えています。

これまで私は、例えば、経理では月次決算や予実管理のプロセス整備、法務では契約書締結プロセス整備、全社またぎとしては稟議フロープロセス整備などを進めてきました。それ以外にも仕組化のためのシステム導入であったり、各種会議体で何を決めて何を話し合うのか、どんな議事録を残すのかであったりと…まだまだありますが、バックオフィスの仕組化に向けて様々取り組んでいます。

中瀬 私は営業における顧客管理の仕組化ですね。私のミッションは売上目標を達成させることであるものの、直近で社員数がかなり増えていますので、仕組化しないと売上目標にしっかり着地しないということがあります。例えば、見込管理の場合、このままいくとどれくらいの着地になるかということを定量的に試算するようにしています。以前は、私一人で感覚的に見込把握していたところを他の人でもできるよう、計算方法を仕組み化したり、定例の会議体を新設して、リーダーが見込を必ず把握するようにしています。

また、営業の見込みはどうしてもブレてしまうものの、出来るだけ正確に測りたいため、Salesforceのフェーズ管理の定義づけをより厳密化しています。以前はもっと属人化していて私がリーダーと口頭で着地確認をしていましたが、20-30人になってくるとそれでは回らないので、データに則って実行していくための仕組化を進めています。

―― 金沢  お二人とも属人化を防ぐというキーワードが出てきましたが、これはミドルフェーズの特徴なのでしょうか。

髙橋 そうですね。属人化からの脱却は重要なキーワードですね。100名を超え、人の出入りも多くなると、誰かに依存した仕事では拡大ができないというのが如実に出てくるのがミドルフェーズの特徴の一つだと思います。

中瀬 以前は、特定の数人に月の売上が偏っているという感じでしたが、そういう規模ではなくなっていますね。属人化からの脱却は、弊社でも経営課題のレベルで相当重要で、入社した方全員が活躍できるような組織基盤を作らなければ成長できないですし、SaaSの分野で一番成長したいと意気込んで全員でコミットしているので、各メンバーにおける営業数字の不確実性を取り除くことは必須ですね。

髙橋 弊社のフロントの方から聞いた話だと、トップ営業のやり方をどうやって全員にシェアしていくかが大事と聞いたことがあります。話し方や間の取り方などです。一番のトップ営業は社長が多いと思いますが、社長の弟子みたいな人がトップセールスマンになって、その人がどうやって下に伝えていくかというのも仕組化の一種であり、ミドルフェーズでは重要な課題だと思います。


経営陣の意図を理解しチームに伝える、リーダー人材・ミドル人材の評価・育成が鍵

―― 金沢  人材育成や人材雇用の話にも関連してくるんですね。

中瀬 「人材」の話としては、半年前まではメンバークラスの育成でしたが、今は成長スピードが早く、300人超えたあたりからはリーダークラスの育成が課題になりつつあります。当初はトップ営業である社長のやり方をメンバーでどう再現するかに焦点が当たりますが、ある程度解決して一定のプロセスができてくると、新しく入った人がそのプロセスをやり切れるようにフォローアップすることが大事になってきます。

システムには限界があるので、モチベーションケアやスキルが身につくような指導をすることが重要になってきますが、一つの組織が20名程度になってくると、組織のトッププレイヤーだけでその組織にいる全員に直接教えることは難しくなりますので、3段階ぐらいの階層の中間に入った人がどれくらい教えられるかがキーになってきますね。

髙橋 当社でもリーダー、部長レイヤーへの成長投資を行っています。目的の一つは、個の力による成果だけでなく、チーム力としての成果を出せる環境の創出です。そのためにはチームメンバーをコーチングする力が必要ということで、コーチング研修への取り組みを始めました。

―― 金沢  シードやアーリーフェーズでは出てこない、規模が大きくなったからこそ出てきた新しい課題ですね。そういう仕組みを作る上で役立った過去の経験などはありますか。

髙橋 マクドナルド在籍時、上司に言われた「あなたは会計士として行動すべきではない」、この言葉が僕の中で一番生きていますね。ちなみに、会計士の資格自体は仕組化自体にはあまり生きてはいません、副次的には生きていると思いますが。私は監査法人から転職したばかりの時だったのですが、おそらく当時の上司から見ると、私がどこか他人事感で仕事をしているような印象を持たれたのだと思います。マクドナルドの経理マネージャーとしてどう動けば会社を成長・支援できるか考えなさい、という指導だったと私は理解しており、その言葉を真摯に受け止め、自分の行動と態度を見直しました。

その結果、当時自分だけに相談が来ていた相談を、経理内で共有できるように会計相談窓口を設置したり、経営報告資料を自分だけでなく他のメンバーでも作成できるようにレクチャーしたりと、属人化しないように仕組化を行いました。

あと、仕組化をするうえで重要なスキルは説得することと、傾聴することの2つだと思っています。説得する上では、自分を主語にせず、会社とか従業員を主語にすることがバックオフィス周りでは重要です。また、バックオフィスはどんなにうまくやっても不満がなくなることが無い世界だと思っているので、従業員から真摯に話を聞いて、現場で起こっている課題の真因が何かを突き止めるために傾聴は欠かせないと思います。

中瀬 過去に3社で就業していますが、正直、全て活きたと思っています。デロイトトーマツで行った業務改善コンサルの経験は、まさに営業プロセスを改善する際に役立っています。具体的には、デロイトトーマツで実施していた業務手順を定めることやヒアリングをしてどんな業務がどんな順序で行われているのかを聞いて、どのあたりが非効率かをゼロベースで考えて、改善案を提案することは、現在でもほぼ同じことをやっています。

また、山田コンサルティングで経験した、金融機関の事業再生計画の策定やクライアントに対するモニタリング、利害関係がある人たちの調整経験は役に立っています。特に、モニタリングで得られた、目的にあわせたデータの抽出方法やグラフの作成方法、改善を促すためのコミュニケーションの方法における知見は、今でも役に立っていますね。

マネジメント面でいうと、Legal Forceに入社するまでにマネジメントの経験はありませんでした。ただし、過去にアシスタントと一緒に仕事をすることはありましたので、どうやって仕事を依頼するか、改善を促すかという経験は活かせていると思います。

バックオフィスが称賛される機会はスタートアップにしかない。細かいところまで気が付く人、当事者意識を持ってコミットできる人はミドルステージに向いている

―― 金沢  スタートアップの経験というよりは前職の経験がそのまま活きたというのが面白いですね。最後に、ミドルステージはこういうところが楽しい、醍醐味がある。また、こんな人が向いているなど教えていただけますか。

中瀬 私自身、LegalForceに入社する前はスタートアップと言えばカオスで業務過多で…というイメージを持っていました。実際には本当のアーリーなステージを経験していないので分からないのですが、50人超えたあたりからそうではないかなと思います。特に100人超えたあたりからは、理由なく朝礼暮改のようなことはあまりないと思います。

個人的にはミドルステージのほうが規模が大きいため、精度の高い仕組みをできるだけ早いスピードで作っていくことが求められていると思います。また、仕組みの影響度やインパクトはミドルステージの方が全然大きいので、ミドルステージのほうが仕組みを作ることは面白いですね。

ミドルステージの仕組み化に向いている人でいうと、細かいところまで目が届く人かと思います。仕組みを作った際に、改善面だけでなく、逆に業務負荷が高くなってしまう人まで想像しながら作る必要があるので、そこまで意識が及ぶ人やそういう想像が好きな人が活躍できると思います。加えて、弊社ではコミットメントが大事です、ということはいつも伝えていますね。

髙橋 バックオフィスの観点からお伝えします。私が在籍した大企業、監査対応していた会社も含めて、バックオフィスは出来上がっている状態です。また、個人的な視点になりますが、そこですごい頑張ったとしても、すごい賞賛をもらえている会社は見たことはないです。そのため、賞賛されるバックオフィスを作り上げていく機会があるのはスタートアップしかないし、そこにはやりがいが見いだせると思っています。

とはいえ、投資は売上の成長や開発投資の優先順位が高いのは現実ですので、まずはお金をあまりかけずに仕組化できることを考えて実行することになります。その過程で、多くの学びと経験値を手に入れることができます。困難な状況のほうが多いとは思いますが、「君たちのおかげで色々助かったよ」と言ってもらえた時の達成感はスタートアップでしか味わえないと思います。そんな達成感を味わいたい場合は、是非スタートアップへの転職を考えてもらえればと思います。スタートアップの転職の第一歩としては、なかなかバックオフィスに投資がしてもらえないアーリーよりも、IPOを目指している、内部管理の体制構築を進めなければならない、やるべきことが見えているミドルフェーズでゼロイチ業務をやる方がいいんじゃないかなと個人的には思います。

ミドルフェーズもそうですが、スタートアップに向いている人は、自分がやっていることについて評価されていないのでは?といい意味でくすぶっている方であったり、弊社代表の平田の受け売りではありますが、仕事に対する責任感と当事者意識を常に持てる方だと思います。また、待ちの姿勢ではなく、自分から仕事を取りに行ける自律的な人材が向いていると思います。

―― 金沢  高橋さん、中瀬さん、ありがとうございました。


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