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【出向起業|体験談】株式会社Officefaction 代表取締役 樋口 徹

※本記事は、当団体が制作したWebサイトの掲載記事を再編集後、移設しており、肩書・内容は掲載当時のものとなります。

出社に付加価値を。オフィスのデッドスペースのマッチングサービスを立ち上げ

―― まずは事業の概要をお伺いできますか。

コロナ禍によって多くの企業でリモートワークが浸透しました。コロナが収束に向かっていくなか、完全に元に戻るかというとそうではなく、週3、4日出勤など、ハイブリッド型のワークスタイルが定着していくことが予想されます。

社員が出勤したいタイミングは月末などに集中することが多く、その最大必要数にあわせてオフィス面積は確保しておく必要があります。そうするとどうしてもオフィスにデットスペースが生まれがちです。本事業では、そのオフィスのデッドスペースと、そこでサービスを提供したい事業者を繋げるプラットフォームを作ろうとしています。


―― オフィスのデッドスペースで、どういうサービスを提供するのでしょうか。

マッサージやランチボックス販売、ビジネス英会話レッスン、ヨガ、パーソナルトレーニングなど、従業員の福利厚生につながるようなサービスを考えています。社員としては「リモートでもできる」ことが体感できた今、出社のモチベーション維持を保つことが難しくなっている現状がありますので、こういったサービスがオフィスで提供されることで、出社に付加価値を付けていきたいと考えています。

実際に、マッサージなどのリアルな場、対面での提供が必要なサービス事業者はコロナ禍で大打撃を受けており、コロナ収束となった場合も、完全に元の水準まで需要が戻るとは今は考えにくいです。彼らにとってもリアルに出社している人達にリーチできる“オフィス“という場所は魅力的であり、そこをマッチングすることに価値があるのではないかと考えました。


―― どういった経緯で、この事業を立ち上げるに至ったのでしょうか。

実は、アイデア自体は2年以上前から考えていました。きっかけは、パンの移動販売車が目に止まったことなんです。移動販売の方に、パンをオフィス内で販売していいですよって話があったら嬉しいですか?と聞いたら、めちゃくちゃ嬉しいです!との回答で。早速、社内の総務担当にもヒアリングしたところ、コンビニ弁当をデスクで食べている人も多いのでニーズあるんじゃない、と。これはいけると思い辞めて起業しようと考えていたところに、コロナが来てテレワークとなりオフィスから人がいなくなりました。正直、あのとき辞めて起業していたら起業した瞬間に詰んでいたかと思います(笑)

本業である交通広告、OOHでいうと、緊急事態宣言やテレワークで厳しい販売状況が続いておりました。そんな中でオフィスでマッサージや嬉しいサービスが受けられるなら、出社のモチベーションアップにつながり、結果的に電車に乗る人も担保され交通広告、OOHにも貢献できると考えるようになりました。

子どもにとって格好良い父親でいたい。その思いをきっかけに、30社のVCを回る

―― 企業に所属しながらも色々とアイデアを持って動かれていた、そのモチベーションはなんだったのでしょうか。

今思うと大きなきっかけとしては2つあったかなと。一つは父親の死。身近な人間の死を目の当たりにして、改めて人生の時間は有限であり、やりたい事をやらなければ、と思うようになりました。

もう一つは、子どもの存在ですね。子どもにどういう人生を過ごして欲しいかと考えた時、良い学校に行って、良い会社に入って通っていれば幸せになれるという時代ではなく、自分で考えて・決めて・行動することが豊かな人生を送るうえで大事だと子どもにも伝えたくて。自分もそうありたい、子どもから見て格好良い父親でいたいと思って、いろいろなアイデア、新規事業を検討していました。


―― 最初に、どういうアクションから始めたのでしょうか。

まずは、知人や本業で知り合ったスタートアップなどの自分でも会える起業家の先輩たち4,5人に会って話を聞きました。自身でチャレンジして乗り越えてきた人たちは、後から続こうとする僕みたいなチャレンジャーをめちゃくちゃ応援してくれるんですよ。そこで、最初はスモールビジネスでもよいかなと思っていましたが、スタートアップでの起業の可能性も探るようになりました。

それから、知り合いのスタートアップの方にVCを紹介してもらって、30社くらいは回りました。半分くらいは全然駄目だね…みたいな反応でしたが、半分くらいはポジティブな反応をもらえて。これはいけそうだと、どんどん盛り上がってきて、ピッチコンテストやアクセラレーションに参加して、事業計画をブラッシュアップしていきました。直近ではJSSA(日本スタートアップ支援協会)のアクセラレーションプログラム4期生に採択されて、1,000万円の出資を受けることもできました。


―― 起業前に30社のVCを回るとは、凄い行動力ですね。

そこは、エンジェルの坂本達夫さんとお会いできたことがターニングポイントだったと思います。知人の紹介でお会いしたんですが、30分の面談だけで、すぐに出資していいよと言ってくださり。そこから他のVCさんにも興味を持ってもらいやすくなったと思います。後から、「どうして出資を決めてくれたんですか?」と伺うと、「家族構成が似てるから」みたいなよくわからない理由で…(笑)

本当のところは分かりませんが、坂本さんご自身にも家族がいらっしゃるので、僕みたいな家族もいる中でのチャレンジを応援したいというところが本質なのかなって思います。


約2ヶ月で申請に至った出向起業。JRグループのアセットをフル活用して事業を立ち上げる

―― タイミング的にも、出向起業という仕組みが上手くはまったのですね。

そうですね、とても良いタイミングだったと思います。出向起業の制度を知ったのは、家族でキャンプに行く道中に聞いていたvoicyから、経済産業省が出向起業を支援…というニュースが聞こえてきて。起業というワードに反応する身体になっていたので、それで覚えていてWEBサイトを検索したところ、オンライン相談会を知って、今年の7月末頃に話を伺い、具体的に出向起業に向けて動き出しました。


―― 相談会に参加されていかがでしたか。

その時点では、会社からの自由度がどれくらいあるかが一番気になっていました。出向元から出資してもらって、毎回お伺いを立てないといけなくなる状況は避けたいなって思っていたので、その点は外部資金調達のやり方次第であることが分かりました。

あとは、オンライン面談の翌日ですよね。もう少し詳細お伺いしたくて声をかけたら、経済産業省の奥山さんがすぐに会ってくれて。色々と出向元との調整について相談させてもらいました。官僚の方がこんなに迅速にスケジュール空けてくれるんだ、そのことにびっくりしました。


―― 今後の展開において、出向元とはどのように連携していくのでしょうか。

前提として、起業家だったら使えるリソース、アセット、人・モノ・金、使えるものすべて使うというスタンスが必要だと考えます。出向起業は恵まれすぎて、覚悟がないんじゃないか、とVCの方に言われたこともありますが、覚悟というよく分からないものよりも、実際に使えるアセットやリソースの方が重要だと思っています。

こういう形で起業ができたので、出向元にしっかりとメリットを返す形でアセットを活用させていただきながら実証実験などをやっていきたいです。実際にJRグループで実証をやったという実績が作れれば社会的信用にもつながるので、それをもって不動産ディベロッパーなど、他業界にも展開してきたいです。ゆくゆくは、出向元に買い戻したいと思ってもらえるような、魅力的な事業に育てたいと本気で思っています。


―― 最後に、出向起業にあたっての意気込みをお聞かせください。

出向起業は個人としての価値を最大化できる仕組みかなと。会社の仕組みに乗って稼ぐ1億円と、外に出て自力で稼ぐ1億円は、同じ1億円でも全く価値が違うんだと思います。その価値のギャップをうまく利用した仕組みだなと思います。非常に恵まれた環境でチャレンジさせてもらえることになったので、事業を成長させることで、出向元や交通広告、OOH業界にもしっかり恩返しをしたいと思っています。


樋口 徹(ひぐち とおる)氏

広告代理店でキャリアをスタート。ベンチャー企業などを経て現職となる鉄道系広告代理店に転職し、新規媒体の開発などに携わる。自分で考え、自分で決めて、自分で行動する環境に身を置くべく起業を決意。二児の父であり、猫を愛す。キャンプ、サウナ、公園探索が趣味。

「オフィスとコンテンツ事業者を繋ぐプラットフォーム“Officefaction”」について

コロナ禍で強制的に推進されたテレワークにより、企業ではオフィス=デッドスペース化している昨今、フロアの削減や社屋の売却ニュースが散見されている。一方、従業員の側では出社に対するモチベーション維持やテレワークによる従業員間のコミュニケーションロス、さらにはテレワークによるメンタルヘルスの課題が浮き彫りになっています。

本事業は、デッドスペースの有効化を課題とする企業に対して、サービス提供のスペースを求める事業者(マッサージや弁当販売・飲食店、英会話講師など)双方の課題解決につながるマッチングサービスを提供、利用対象となる従業員の満足度向上にも寄与することを目指しています。

■会社概要
・問い合わせ先|info@officefaction.com
・WEBサイト|http://www.officefaction.com/

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